2025.04.10 コンプライアンス
第11回 市議のハラスメント12件認定による辞職勧告決議
(3)B市議会の対応
筆者は、傍若無人ともいえるC議員の言動に対して、B市議会の取組みは今後の議会におけるハラスメント撲滅の模範となるケースになる可能性があると考えています。そのポイントは、「B市議会ハラスメント防止条例」にあります。
ここまで紹介してきたとおり、B市議会ではC議員によるハラスメント行為が2022年から横行していました。そんな中でB市議会では、2024年3月定例会において「B市議会ハラスメント防止条例」が可決されています。地方議会でハラスメント防止条例の制定が進んでいるとはいえ、その制定率は自治体数に比してわずか4.5%であることを考えると、議会としてC議員のハラスメント行為を抑制することを念頭に条例が制定された可能性は否定できません。
2024年11月に行われたC議員に対する注意処分についても、B議会議長が「今回のハラスメントの多くが条例施行前のものであり、議会の自浄作用を信じた」と発言しており、条例制定によってC議員のハラスメント行為を抑制しようとした動きがうかがえます。
しかしながら、C議員は自らも可決した「B市議会ハラスメント防止条例」の内容を理解することなく、またハラスメント認定によって交付された注意書に目を通すこともありませんでした。
反省の色が全く見られないC議員に対して、B市議会は「B市議会ハラスメント防止条例」の制定から同僚議員の苦情申立て、申立てを受けた注意書の交付、本人の言動が改まらないことを理由とした辞職勧告と、条例に基づいた一連の対応を進めてきました。
地方議会では、C議員のように旧来型の価値観を持つベテラン議員によるハラスメント行為が後を断ちません。今回の辞職勧告の可決を受けてもC議員は辞職を否定していますが、ハラスメント行為を行った議員として全国的に報道されることになり、当然、B市内の有権者にもこの事実が周知されます。
これまでの連載でもハラスメント行為者が反省の色を示さないケースを数多く紹介してきましたが、このようなハラスメント行為を繰り返す議員に対しては、B市議会のような対応が一定の社会的制裁を加える上で有効な手段であると考えています。
(4)原因と対策
本事案におけるC議員の言動は、本人が77歳と高齢であることや、当選9期のベテランであること、そして何より、辞職勧告決議を決議した際の議長から「根本的に反省、改善されていない。重く受け止め、自ら職を辞すべきだ」と発言があったように、自主的に言動を省みるのは難しいでしょう。ですが、今回のB市議会の対応のように、本人の自省に期待するのではなく、制度によってハラスメントを抑止することは可能です。
議会内におけるハラスメント行為に悩む議会こそ、積極的にハラスメント防止条例を制定し、制度に違反する議員に対して制度をもって処分することが妥当といえます。その点で本事案は、議会におけるハラスメント撲滅に向けた、貴重な先例になると考えています。