2025.04.10 ICT活用・DX
第4回 「議会事務局主体のDX推進」で業務効率化と政策立案サポート強化を実現するには
事務局主体のDXがもたらす効果
(1)本来のサポート業務への傾注
ペーパレス化やオンラインシステムの導入によって、議会事務局の職員が資料の印刷・配布・チェックなどの定型業務に割く時間を削減できれば、前述のとおり「議員の政策立案を支援する」というコア業務に力を注げるようになります。現在は手が回らず十分に活用されていない議会図書室や調査機能を強化し、議員の調査依頼に応じて迅速かつ的確に情報を提供する、といった形でのサポート体制整備が期待できます。
※私の知っている議員の政策立案を支援している例:横浜市会(https://www.city.yokohama.lg.jp/shikai/gikaikyoku/journal.html)、鹿児島市議会(https://www.city.kagoshima.lg.jp/gikai/seimuchousa/shigikai/koho/chosajiho/index.html)
(2)合意形成と制度設計がスムーズに
議会事務局が主体となる場合、政治的にニュートラルな立場でプロジェクトを進めやすい点は大きな利点です。具体的なシステム要件や運用ルール、研修計画の策定なども、「どの会派に有利か」、「誰の手柄になるか」という観点を排除しやすく、あくまで業務効率と議会全体のメリットを追求できます。結果として、会派や個人の利害対立が生じにくく、合意形成が比較的スムーズに進むでしょう。
(3)DXが進むほど広がる将来の選択肢
DXによる事務効率化は単に「作業時間を減らす」だけにとどまらず、将来的にはオープンデータの活用や外部ツールとの連携、AIを使った会議録解析など、多様な発展可能性をもたらします。議会が蓄積するデータ(会議録、議案情報、条例、予算決算資料など)を機械的に再活用できる形へと整備しておけば、市民やNPO、研究者など外部のプレイヤーが新たな視点で活用する余地も広がります。こうした動きは、地方議会における透明性向上や政策イノベーションを後押しするでしょう。
おわりに
議会DXを円滑に進めるためには、導入費用や学習コストといった初期ハードルだけでなく、「誰が主体となって取り組むのか」、「予算をどう確保するのか」という政治的・組織的な課題をクリアする必要があります。とりわけ、特別委員会のような正式な枠組みがない自治体では、一人の議員のイニシアチブだけで進めようとすると政局化しやすいため、議会事務局主体のプロジェクトとして立ち上げるのが効果的です。
事務局をDX推進役とすることで、政治的に中立な立場から合意形成を図れるだけでなく、得られる時間とリソースを「本来の調査・政策立案サポート」に振り向けられます。DX導入時の経費についても、安易に政務活動費からの支出に頼るのではなく、議会全体にとって不可欠な投資であるならば、議会費として正々堂々と予算要求を行う方が筋が通りやすいでしょう。
こうした形でDXを進めていけば、「DX=誰かのパフォーマンス」ではなく「議会全体の業務効率と政策機能を高めるための改革」として認識されやすくなります。結果的に、議会運営の質も高まり、住民からの信頼感を向上させる好循環を生み出すはずです。
次回(最終回)は、これまでの連載を総括しながら、データドリブンな政策立案や市民参加型の議会運営など、DXがもたらす未来像について議論していきたいと思います。