2025.02.25 仕事術
第29回 どうする自治基本条例②
元所沢市議会議員 木田 弥
前回は、執行部から提案された自治基本条例案をどのようなプロセスで改正したかを紹介しました。今回は、具体的な条文修正の詳細と、なぜそのような条文修正を実施したかについて紹介したいと思います。
ポイントは三つ。条例の「最高規範性」という文言の扱い、外国籍住民の住民投票への参加、議会の位置付け、でした。それらの点を中心に、条文修正についてその趣旨を説明することで、自治基本条例のあり方、もっといえば地方自治のあり方、地方議会のあり方についても確認していきます。
通則的な修正は3か所、前文で理念を表現
本則全体を通じての通則的な修正は3か所ありました。
「信託」を「負託」に修正、「市及び市議会」を「市」に修正、そして、「市及び市議会」を「市」に修正したことから、「市」の一部を「市長その他執行機関」に修正しました。「信託」と「負託」の違いには、私はあまり興味がありませんでした。
「市及び市議会」を「市」に修正した理由ははっきりしていて、「市」と表現した場合、一般的には「市長その他執行機関」のみをイメージする人が多いのですが、市議会もこの「市」には含まれます。よって、「市」に修正しました。これに伴って、執行機関に相当する部分は「市長その他執行機関」と修正しました。
というか、そもそも執行部は、分かっていてなぜこの表現を放置したのか、そのことの方が驚きでした。自治基本条例検討委員会を説得し切れなかったようです。実際、法制執務担当のある職員からは、議会での修正を期待されました。
二元代表制という言葉もあるように、市長と市議会はそれぞれ市を代表しています。そもそも二元代表制の観点からすれば、「市及び市議会」という表現はあり得ないというのが私の考えです。
前文は、比較的自由度の高い表現が許されるパートです。検討委員会の皆さんの思いが詰まった表現が満載でした。しかし、議会としては、思い切って見直すことにしました。
所沢市には米軍の通信基地があるのですが、その通信基地の返還を求める基地対策については、原案33条に記載されていました。しかし、この条文は削除したため、「所沢市平和都市宣言」の文言を挿入し、基地問題について前文で言及することとしました。この取扱いは、条文としては残せないが何らかの思いを残したかったため、法的拘束力の強くない前文で対応したものです。
また、市民自治の定義規定が条文には存在しなかったため、「市民が主役となって自治を進める市民自治」というように、「自治を進める」という言葉を入れることによって、市民自治の説明的表現を加えました。本来であれば、「市民自治とは」という定義規定が必要でした。というのも、市民自治という言葉は、感覚的には分かっても具体的には人によって定義がばらつく可能性があるためです。
また、後述するように、本条例が最高規範であることを規定しないこととしたため、妥協案として、最高規範を目指すという表現として、「最高規範たるべく」というように表現を改めました。
以下は、条例の前文から上記に関連する部分を抜粋したものです。
わたしたちは、所沢市平和都市宣言の趣旨に基づき、人類共通の願いである平和な社会を守りながら、住んでいることに誇りを持ち、今後も住み続けたいまち所沢を実現するために、市民一人ひとりが互いに助け合い、協力し合って、子どもとみどりを育み、すべての人を大切にするまち所沢をつくっていきます。
市民自らが、主体的かつ積極的に市政に参加し、市は市民の負託に応え、市民と情報を共有し、市民が主役となって自治を進める市民自治によるまちづくりを推進していくために、ここに所沢市の最高規範たるべく、所沢市自治基本条例を制定します。
(下線筆者)