2024.12.25 仕事術
第27回 どうする総合計画②
外国籍児童生徒に対する日本語教育なども追加
特別委員会では当時の市長の独善的、情緒的な表現の修正だけにとどまらず、より建設的な修正も行いました。
「地域で孤立している生活困窮者やひきこもりを早期発見し」の「ひきこもり」の部分と、「また、生活困窮者自立支援法に基づいた自立相談等の支援やひきこもり対策」の「ひきこもり対策」の部分を加筆し、ひきこもりの課題と対策を明確化しました。
また、「子どもの貧困の深刻化」を加筆し、子どもの貧困を明記しました。子どもの貧困対策は2017年2月、健康福祉常任委員会で提言していましたが、原案では明記されていなかったためです。
「様々な悩みを抱える子ども・若者を相談機関につなげ、さらに若い世代特有の傾向に即した、自殺防止対策を行います」と修正し、若い世代の「自殺防止対策」を加筆しました。
成果指標として示されていた体力テストにおける上位ランクの児童の割合(小学校)は、表全体を削除しました。これは、小学生の発達段階はいろいろであり、体ができてくる途中であるので、小学校での事業目標からは外し、ある程度の第二次性徴が終わった段階である中学生の体力テストの表は残して、義務教育における中学校での事業目標としました。
また、外国人市民が暮らしやすい環境づくりの「言葉や生活環境の違いなどから日常生活や災害時に不便を感じないよう」の次に、「外国籍児童生徒に対する日本語教育」を加筆しました。
さらに、「生活習慣や文化の違いなどをわかり合うための交流・学びの場を設け、帰国児童生徒への支援を充実させます」に修正しました。国会では外国人労働者の受入れが議論されていたこともあり、今後、さらに外国人労働者とその家族が増えることが予想されたため、外国籍児童生徒の日本語教育を明記することとしました。国際化の中において帰国児童への支援を明記することが必要と考え修正しました。
ほかにもいくつかの点を加え、14か所を全会一致で修正しました。
最終的には、「善き」を「よき」の文言への修正は、一つの会派を除き賛成多数で可決しました。
また、ある会派からは、特別委員会では修正提案がなされなかった項目を加えた修正案も提案されましたが、これは否決されました。
特別委員会では、総合計画の審議の今後のあり方について以下のような付帯決議を行い、全会一致で可決しました。
・議会における十分な議論ができるよう、今回同様に第3回定例会に提案すること。
・より実効性のある市民参加の方法を再検討すること。
・評価指標及び事業目標の設定に当たっては、より市民に分かりやすいものとすること。
・財政予測に関して、明確化すること。
「善き」の表現など、一部の論争的な修正もありましたが、他の修正箇所はひきこもり対策や子どもの貧困、外国人児童対応など、おおむね議会でも対応の必要性が認識されていた項目の追加となりました。皆さんの議会でも、まずは基本計画までを決議事項にされること、さらには意義のある追加提案を議会が主導して実施されることをお勧めします。総合計画に掲載されることは、確実に政策として執行部の対応が変化します。
現在、所沢市議会では、特別委員会ではなく総務常任委員会が主管となって、第6次総合計画の後期基本計画の議論を進めています。この点につきましては、改めてご報告します。
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◆書籍情報
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江藤俊昭 新川達郎 編著(定価3,300円 (本体:3,000円))
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