2024.09.25 政務活動費
第10回 会派共用費の政務活動に係る条例への規定の是非/政務活動費からの人件費の支出について
政務活動費からの人件費の支出について
政務活動費の使途基準に定められた人件費は、会派又は議員が行う活動を補助する職員を雇用する経費であると原則として考えられる。
人件費の支出についても、不当利得返還請求権の発生原因事実である法律上の原因がないことは、当該請求権があると主張する者において主張立証することが原則であるが、議員が支出した政務活動費の詳細な使途や目的について住民が把握することは困難である場合も多いこと等を考慮すると、収支報告書及び証拠書類の内容等の事情から条例に規定された使途基準に該当しない支出であることを推認させる一般的、外形的事実を主張立証した場合は、使途基準に該当しない支出であることが事実上推認され、不当利得返還請求を受けた議員等がこれを覆す適切な反証を行わない限り、使途基準に該当しない支出であると解される。
政務活動費の人件費の支出については、①職員との雇用契約の内容、②給与等への政務活動費からの支出状況を勘案して適正な支出かどうかが判断されると解される。
名古屋高判令和6年4月17日にあるように、①については雇用契約における業務内容が「政務調査補助用務・講演会活動補助用務」又は「政務活動に関する業務及び秘書業務全般」とされた場合、政務活動を補助する業務とそれ以外の業務を兼務する職員であると推測され、会派又は議員が行う政務活動を補助する職員を雇用しているものと判断される。②については、二つの業務を兼務する業務に対する給与となることから、政務活動を補助する業務量を勘案して按分計算をした上で政務活動費を充用することとなる。この場合、一般的には二つの業務に携わることから、給与の2分の1を限度として支出することは反証が提示されない限り認められる傾向にあると解される。
そのため、会派又は議員が政務活動を補助するために雇用した経費として支払った職員の給与に対して、違法な支出であると請求する場合は、給与に相当する政務活動の補助業務に従事した実態がなかったことを推認させる一般的、外形的事実の主張立証が必要であるが、現実問題として事務所内等における職員の実態を職員自らが述べるならまだしも、第三者がそれを立証することは極めて困難であると解される。
それゆえ、雇用契約内容や按分率にもよるが、政務活動を補助する業務を含め従事する業務数に対応する按分率であれば、政務活動費からの人件費としての支出は認められるといえる。
逆に、会派の政党支部としての事務所や議員個人事務所で雇用する人件費の経費を全額政務活動費から支出することは、事務所における職員の職務の性質上、政務活動の補助業務以外の業務が存在すると推測されることから、政務活動の補助業務のためだけの限定的な給与の支払などの例外を除き、政務活動費からの給与の支出については一定の按分率の適用が必要になる場合があると解される。