2024.09.10 コンプライアンス
第5回 副議長による姉妹都市の市長の娘に対するセクシュアル・ハラスメントによる辞職勧告決議
議会での正しい対応を知るためにはケーススタディが効果的
今回のハラスメント事案では、C副議長のセクハラが最も大きな問題ですが、その後の議会対応も適切とはいえません。ただし、どのような組織でも、想定していない出来事に陥ると思考が硬直化し、適切な判断を下せなくなる傾向にあります。だからこそ、ケーススタディや事案発生時のガイドライン作成などを通して事前準備をしておくことが重要です。
(1)議会での人間関係や意思決定のプロセスを踏まえたハラスメント研修が必要
社会のハラスメントに対する目が厳しくなっている中で、事案が発生し、適切な対応がとれないと、組織全体が批判にさらされることになります。今回の事案のように全員協議会の結果や議会運営委員会の結果、そして本会議での議論が報道されるような場合、一つひとつの意思決定プロセスにおいてどのような議論を行い、その意思決定にはどのようなリスクがあるかを理解する必要があります。
今回の事案は、副議長という多数派に属する人物が引き起こしたため、同じく多数派が集まる議会運営委員会でC副議長を擁護する動きがあったことは容易に想像がつきます。ですが、その結果も含めて公開されてしまったことで、かえって議会運営委員会という密室で政治が行われてしまったという印象が強化され、結果的にB市議会の信頼が損なわれることになりました。
このような議会の特殊性は、通常のハラスメント研修では考慮されません。議会内部の事情も考慮したカリキュラムでハラスメント研修を設計することが、効果的なハラスメント研修を行う上で重要といえるでしょう。
(2)ケーススタディで自分の「認知バイアス」を把握する
効果的なのは、職員とのやりとりや、他の議員に対する振る舞いをシミュレートし、それぞれのケースについて議員同士で話し合い、どのように関わるべきかを考えていく研修です。自分の考えがアンコンシャス・バイアスに該当するかをその場でチェックできるので、当事者意識を持たせることができ、座学だけの研修よりも高い学習効果を得られます。
最近は「自分の言動が適切かどうかをチェックしたい」という要望が増えています。それに応えるために、ポリライオンではハラスメントかどうかをAIがチェックする「AIハラスメントチェッカー」を開発しました。
このAIハラスメントチェッカーは、多くの方が利用しているLINEを使用しているので、簡単に自分の言動をチェックできるのが特徴です。
AIハラスメントチェッカーは現在開発中の実証実験段階なので、どなたでも無料でご利用いただけます。ぜひセルフチェックや議会内・会派内での勉強会などにご活用ください。
参考:一般社団法人ポリライオン「AIハラスメントチェッカー」 https://www.polilion.com/checker
今回はA県B市議会のC副議長による姉妹都市の市長の娘へのセクハラ事例について解説してきました。
議員は市民に選ばれ、そのまちの意思決定を行う存在です。議員には高い倫理観が求められるため、自らのアンコンシャス・バイアスを理解し、適切な立ち居振る舞いをしなければなりません。
また、ハラスメント事案が発生した後の議会の立ち居振る舞いも重要で、適切な対応をしないとハラスメントを行った本人だけでなく、議会全体のイメージの悪化につながります。
これからの地方議員には、ハラスメントに対する知識やハラスメントをしないための言動を身につけて、より良いまちづくりを行うことが求められます。政治分野のハラスメントがなくなるよう、私たちもサポートしてまいります。
◉ポリライオンが提供するプログラムについて
https://gnv-jg.d1-law.com/login/article/20240527/68786/7/