2024.09.10 コンプライアンス
第5回 副議長による姉妹都市の市長の娘に対するセクシュアル・ハラスメントによる辞職勧告決議
(3)辞職勧告決議の内容
令和6年4月○日 来市されたD市一行の歓迎2次会で、C副議長が、カラオケマイクをD市長の娘さんの下腹部に近づけた件について言及する。
4月○○日 この動画を見た当市の市長は、不適切な行動があったと判断し、相手方の市長に謝罪メールを送った。市が雇用する弁護士も同様の判断をされた。
5月○日 市議会全員協議会にて動画を確認し、全議員が不適切な行動と認め、議員辞職勧告決議を提出すべきと、大多数(14人中10人)の議員が意思表示した。議長がこの結果を本人に伝えたが、「副議長職は辞任するが、議員は続ける。」と表明した。
5月○○日 議会運営委員会にて6月定例会にこの決議を提出することを協議したが、反対多数(6人中4人)で議会としての提出は見送られた。
この決定に納得のいかない議員を代表し、以下の主な理由で、議員辞職勧告決議を提出する。
1 遠路来訪されたD市長の娘さん、ご両親、並びにご一行の方々に与えた迷惑、不快感は極めて大きく、そのショックは測り知れない。
2 個人の軽率な行動により、B市、市民、市議会に不名誉な傷を残すことになり、多くの市民から辞職すべきとの声が上がっている。
3 35年にわたる両市の親善友好関係に少なからず影響を与え、両国関係者の永年の努力を踏みにじることになった。
4 能登半島地震からの復興対応に追われる被災地に、両方の議会事務局の制止にもかかわらず視察を強行し、3月○日、3月定例会で本会議場にて謝罪された。その2週間後の不適切な行動は弁解の余地がない。
市民の代弁者として二元代表制の一翼を担う市議会議員が、泥酔し、不適切な行動をし、国の内外も含め、多くの方々に混乱と迷惑をかけ、今なお尾を引いている。
このことは、市議会議員としての品格、良心が疑われ、市民の負託を裏切ることになり、市民の市議会に対する信用を著しく失墜させるものである。これ以上議員を続けることは、同じ市議会議員として看過できない。よって、即刻自ら議員の職を辞することを強く求めるものである。
以上、決議する。
(4)原因と対策
本事案の原因としては、C副議長の倫理観やモラルの欠如が挙げられます。C副議長は公人としての立場を忘れ、個人的な判断で不適切な行動をとったことが、今回の問題の発端となりました。「盛り上げようとした」という発言の裏には「この行為は許されるはずだ」という自分の中での「認知バイアス(不適切な思考の癖)」が存在します。また、メディアの取材に対しても釈明として「(歌っていた曲が)ロックンロールですので、こういうふうにやっていたと思うんです」、「酔っていて足元がふらついただけでわざとではない」と発言しており、あくまで自分の行為がハラスメントには当たらないと考えていることが伝わります。そして「憤りを感じている」との発言から「何でマイクを近づけた程度でバッシングを受けなければならないのか」という内面の不満が表出しています。
辞職勧告決議文によると、C副議長は能登半島地震の被災地への視察も、B市と受け入れ先の自治体から止められているにもかかわらず強行し、議会で謝罪しています。これらの一連の行動を見ると「議員だからこれくらいやってもよいだろう」という誤った思い込みが背景にあったといえるでしょう。このような思い込みを「権威性バイアス」といい、権威ある立場の人の言動は正しいと周囲が認識することや、本人がそう思い込んでしまうことを指します。
また、組織としてのコンプライアンス体制やハラスメント防止策の不備も原因の一つです。市議会にはハラスメント防止に向けた明確なガイドラインや教育研修が不足していたため、議員個々の行動に対する抑止力が機能していなかった可能性があります。さらに、市議会全員協議会での対応の遅れや、議員辞職をめぐる判断の不統一も問題を長引かせ、市民や関係者の信頼を損なう一因となりました。
今後、B市では全議員を対象としたコンプライアンス研修及びハラスメント防止研修を実施する必要があります。これにより、議員が公人としての自覚を持ち、適切な行動をとるための基盤を強化することが期待されます。また、人には様々な「認知バイアス」があることから、自分がどのような認知バイアスを持っているかを理解するための研修を実施することで、不適切な言動を控えることが可能になります。
再発防止策として、ハラスメント行為に対する厳正な処分基準を設定し、再発防止のための明確なルールを設けることも重要です。この基準を明文化し、全議員に周知徹底することで、抑止効果を高めることができます。