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2024.09.10 コンプライアンス

第5回 副議長による姉妹都市の市長の娘に対するセクシュアル・ハラスメントによる辞職勧告決議

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A県B市議会のC副議長によるセクハラ事案

 今回のケースは、A県B市議会のC副議長によるセクハラの事案です。2024年4月に行われたB市と姉妹都市である海外のD市との国際交流事業の中で発生しました。
 本事案では、歓迎会後に行われた非公式の2次会の場において、マイクを持って歌っていたC副議長が、D市市長の娘の下腹部にマイクを近づける行為を行いました。この一部始終が同僚議員の撮影した動画に記録されており、また報道機関で大々的に取り上げられたことから、大きなニュースになりました。

(1)本事案の概要

 2024年4月にA県B市議会のC副議長は、国際交流事業で来日した海外のD市市長らの歓迎会後に行われた非公式の2次会に参加。2次会会場のスナックでカラオケを歌い、踊っている最中にD市市長の娘の下腹部にマイクを近づける素振りを見せた。
 本件についてC副議長は「場を盛り上げるためにやった」、「憤りを感じている」、「足元がふらついただけ」などと発言しセクハラを否定。
 この後に行われた全員協議会においてC副議長は副議長職を辞任し、全議員が不適切な行為であると認定。辞職勧告決議についても多数が賛成していた。しかし、2024年6月に辞職勧告決議が発議されたものの、反対多数で否決された。

(2)本事案の問題点
 本事案では大きく三つの問題点が挙げられます。まず、C副議長が姉妹都市の市長の娘にハラスメント行為を行ったことです。非公式な2次会の場ではありますが、国際交流という公共性の高い事業の一環であることは間違いありません。そんな中で個人の軽率な行動が市全体の信頼を損なう結果となりました。C副議長は「場を盛り上げようとした」と証言していますが、倫理観やモラルが欠如した振る舞いであると断言できます。これにより、D市との35年にもわたる長年の友好関係に悪影響を及ぼす可能性がある点は重大な問題です。
 国際的な友好関係は、双方の自治体が時間をかけて築き上げてきたものであり、一度損なわれれば回復には多大な労力と時間を要します。このような状況でのハラスメント行為は、国際的な信頼関係を悪化させ、B市全体の評判や信頼性だけでなく、我が国へのイメージを悪化させることにもつながりかねません。
 問題の発覚後の対応にも問題があります。C副議長は副議長職を辞任したものの、市議会議員としての職務は続行する意向を示しています。この点についての最終的な審判は有権者が下すことになりますが、議会での対応は「内集団バイアス」がかかっている可能性があります。
 「内集団バイアス」とは、自分の所属する集団を特別であると認識し、自分や集団内のメンバーを過大評価する認知バイアスの一つで、簡単にいえば「身内びいき」のことです。
 B市議会の全員協議会では、全議員がC副議長の行為を不適切と認め、議員辞職勧告決議案を提出すべきとの意見が14人中10人と多数を占めました。しかし、全員協議会では「出処進退は本人が決めるべき」と結論が出ませんでした。そして議会運営委員会では反対多数で辞職勧告決議が見送られ、これに反発した議員から辞職勧告決議が発議されました。こうした対応の不備は、市議会が市民の代表としての役割を十分に果たしていないという印象を強め、議会全体の信頼性を揺るがす大きな要因となりました。

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