2024.08.26 仕事術
第24回 どうするモンスター住民①
元所沢市議会議員 木田 弥
今回は、少し趣向を変えて、私も対応に苦慮しつつも、一方で議員としての力量を高めてくれた、モンスター住民への対応についてお伝えします。皆さんの中にもモンスター住民への対応に苦慮されている方がいるのではないでしょうか?
巧みに構築されたビジネスモデル
先日、第一法規から送られてきたメルマガのタイトルが「自治体へのハードクレームに適切に対処!」でした。そのメルマガでは、横山雅文『事例でわかる 自治体のための組織で取り組むハードクレーム対応』(2020年)や、続編と思われる同『事例でわかる 自治体のための組織で取り組む 続 ハードクレーム対応─新型コロナや災害対応等の事例と職員のメンタルヘルス防衛策編』(2022年)などの書籍が紹介されていました。
今回取り上げるモンスター住民は、単に窓口でクレームを騒ぎ立てるといった分かりやすいレベルではなくて、巧妙かつしたたかに、行政の弱みにつけ込んで行政に入り込み、ひいては、モンスター住民なしでは行政の一部の活動が作動できないように思わせて行政をコントロールするなど、一歩間違えると議員以上の政治力を有するに至る人たちです。議員を取り込んで、議員と連動して行政を責め立てるモンスター住民もいます。
行政としても、特に公民館やコミュニティセンターなどの住民に最も近い分野では、自発的に行政活動に協力してくれる住民は使い勝手がよいのです。そこにこうしたモンスター住民はつけ込んでくるのです。最初はうまく住民を使っているように見えて、最後は手玉にとられてしまいます。
私は、よせばいいのに、必要に迫られてモンスター住民と対峙(たいじ)することを選択しました。その結果、悪いうわさを流される、対峙後の選挙で得票数が減るなど、多少の返り血も浴びましたが、一つひとつ薄皮を剥ぐようにして、彼らのビジネスモデルを解体しました。同時に、彼らのビジネスモデルの見事さにも驚かされました。
これからお話しする内容は、関係者もおおむね現役の活動を引退されています。しかし、関係者に差し障りがある部分もありますし、あくまでも私の視点から捉えた見解ですので、一部真実をベースにしたナラティブ(物語)として紹介します。皆さんの議員活動の参考になさってください。
もちろん、集票活動だけを考えれば、そういったモンスター住民と縁(えにし)を結び、彼らの代理人となって活動することも否定はしません。おそらく、彼らは選挙で熱心に支援してくれることでしょう。
私は、そういうことができない性分なので、結局、彼らと対峙してしまい、票も減ってしまいましたが、対峙することによって、その後の議員活動が充実したのも事実です。
特に対峙後、3回にわたって議会選出監査委員を務めることになるのですが、私の監査委員としての活動の着眼点は、このモンスター住民との対峙から得た知見がもとになりました。監査委員としてある種の専門性、独自性を発揮できたのも、この経験があったからこそでした。