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2024.08.13 仕事術

第4回 議会事務局の職員に手紙やプレゼントを渡したストーカー行為とパワハラによる辞職勧告決議

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(3)辞職勧告決議の内容

 市議会議員は、市民全体の代表者として、その立場と職責の重さを深く自覚し、法令、条例を遵守し、市民の模範となる高い倫理観や見識をもって、市政の発展と住民福祉の向上に努めなければならない。B市議会基本条例第15条では、「議員は、B市議会議員政治倫理条例に定める事項を遵守し、品位の保持に努めなければなりません」と規定している。しかしながら、C議員について、B市議会議員政治倫理条例に規定する政治倫理基準に違反する疑いがあるとして、同条例第5条に基づきB市議会議員14名から令和6年3月○日付で審査請求がなされた。B市議会政治倫理審査会にて審査が行われ、審査結果は、職員に対するストーカー行為及びパワハラ行為は事実であると認定し、当該行為は、B市議会議員政治倫理条例第3条第1項第1号、第6号、第7号、第8号及び第9号に違反するとの結論である。この度のB市議会政治倫理審査会の審査結果は、極めて重大であり、C議員の行為は、市民の負託を受けた市議会議員として、政治倫理規範を逸脱した行為であり、規範意識が欠如しているといわざるを得ず、市議会議員としての資質に欠けるものである。また、今回の件により、B市議会の品位と名誉を著しく傷つけ、本市議会を混乱させた責任は重大であり、本市議会として断固とした態度を表明する。よって、C議員は、自らの犯した事態の重大さを真摯に受け止め、自らの意思により、直ちに市議会議員の職を辞することを勧告する。以上、決議する。

(4)原因と対策
 本事案の原因は、C議員の抱く「正義感」が誤った方向で発揮されていることにあります。これは、弁明書で「上司がパワハラとか、ストーカーとかに怯〔おび〕え、部下の顔色をうかがいながらの指導では、市民からの税収で運営する行政の組織が形骸化し、市民生活の安全・安心・を守ることはできない」(原文ママ)と主張していることからも明らかです。
 C議員はハラスメントに関する辞職勧告決議後にも「(辞職勧告に応じる予定は)今のところない。私はこういうことはやっていない」、「厳しく叱った点がパワハラととられた。体調が良くなったら前と同じように市民のために働く」と回答。さらには、「記憶力が低下する病気があり、記憶していない」、「一方的なハラスメント行為の認定で、議員としての名誉を大きく傷つけられた」と名誉毀損で議長と政治倫理審査会のメンバーを警察に告訴しています。
 警察に告訴するほど「自分は正しい」という思いが強く、「正義感」、「信念」と呼ばれるような思考を持っていることが、この一連のやりとりで明らかになっています。
 原因は明らかに価値観の変化に対応した言動ができないC議員にありますが、C議員に限らず無意識の思い込み(アンコンシャス・バイアス)はハラスメントの大きな要因の一つです。
 アンコンシャス・バイアスは「無意識の思い込み」、「偏見」という意味です。人は基本的に、自分の価値基準はこれまでに経験してきたことや家庭環境、所属してきたコミュニティでの価値観がベースになります。年齢が高いほど旧来型の価値観を持っており、性別役割分担意識が強かったり、ハラスメントに対するコンプライアンス意識が低かったりします。
 また、今回のケースのように「自分が正しい」と思い込み続ける期間が長いほど、その修正は困難になっていきます。
 第3回のハラスメントもアンコンシャス・バイアスが原因でしたが、今回はより強固なアンコンシャス・バイアスと、周囲から理解されにくい「正義感」の発露がハラスメントの原因です。
 人は誰しも、何らかのアンコンシャス・バイアスを持っています。自らのアンコンシャス・バイアスを正しく認識し、価値観の変化とともに適宜修正していくことが必要です。

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