地方自治と議会の今をつかむ、明日につながる

議員NAVI:議員のためのウェブマガジン

『議員NAVI』とは?

検索

2024.08.13 仕事術

第4回 議会事務局の職員に手紙やプレゼントを渡したストーカー行為とパワハラによる辞職勧告決議

LINEで送る

A県B市議会のC議員によるストーカー・パワハラ事案

 今回のケースは、A県B市議会のC議員によるストーカー行為をきっかけにしたパワハラの事案です。
 本事案は、C議員が議会事務局のD職員の職務中に個人的な手紙を渡し、返事を求める言動をした上、D職員宅にプレゼントと手紙を持っていった行為などがストーカー行為であると警察の指導を受けています。
 この指導を受けてからは、C議員はD職員へのパワハラを繰り返すようになり、一連の行為が問題であるとB市議会政治倫理審査会で認定され、辞職勧告決議が可決されました。

(1)本事案の概要

 2023年12月頃からA県B市議会のC議員は、議会事務局のD職員の職務中に個人的な手紙を渡し、返事を送るように要求。D職員宅に「お子さんへのクリスマスプレゼント」と称してプレゼントと手紙を持っていくなどの行為が見られた。
 さらに、職務外で議会事務局を頻繁に訪れたり、D職員の個人携帯電話宛に何度も電話をして、電話に出るように要求。D職員が一連の行為を警察に相談したところ、ストーカー規制法に該当するおそれがあると警察からC議員に指導が行われた。
 この後、C議員はD職員にパワハラを繰り返すようになり、出産した別の議員への対応協力をしていたD職員を怒鳴りつけたこと、C議員のパワハラを理由としてD職員が転出異動を申し立てたことなどを理由として2024年3月に審査請求が行われた。
 審査の結果、ストーカー行為及びパワハラ行為が認定され、2024年4月に辞職勧告決議が全会一致で可決された。

(2)本事案の問題点と弁明
 本事案では、ストーカー行為とパワハラ行為の2点がB市議会政治倫理審査会において認定されました。しかし、C議員はどちらの行為も政治倫理審査会に提出した弁明書で否定しています。それぞれの行為の問題点とC議員の弁明について解説していきましょう。
ア 「①ストーカー行為」について
 C議員がD職員に手紙を送り、またD職員の自宅を訪れてプレゼントを渡した点については、ストーカー行為に該当する可能性があるとして、警察から指導が入っています。この時点で客観的に「ストーカー行為とされる言動があった」ことは間違いありません。
 しかし、C議員は弁明書で「母親〔知人の娘であるD職員〕の職場を訪ね、『毎日帰りが遅いようだが、なるだけ〔なるべく〕早く帰ることを考えて』と挨拶」したと弁明しています。
 また、自宅を訪れた件についても、「クリスマスも近かったので、僅かだが子供へのプレゼントを用意して、知人宅を訪ねたが留守であったので『娘さんにあげてください』とメモ書きをして子供用のカードなどを届けたものである」と弁明しました。
 仮にD職員の自宅がB市内だった場合、ストーカー行為だけでなく公職選挙法上の「寄附の禁止」に該当する重大な違反行為を行っていたことを自ら証言したことになります。
イ 「②パワハラ行為」について
 D職員へのパワハラについて、C議員は「議会に向かったところ、『事務局の廊下で事務局の女性職員〔D職員〕が赤ん坊を抱いてうろうろしていたので、職務中に何をしているんだ』と叱りつけた」と自ら証言しています。
 この乳児は子育て中の議員の子で、子連れでの登庁が議会内で認められていたことから、正規の手続を踏まえた上でD職員が一時的に預かっていたものです。
 C議員は叱った理由について、B市議会は行政執行と議員とが「論議を尽くす唯一の審議言論の場」であり、「執行者側も相対する議員側も緊張して、議場へ向かう通路での出来事である」と、通路で子どもを預かっていたことを叱責するのは正当であると主張しています。
ウ 「③本事案の問題点」について
 本事案の問題点は、C議員がストーカー行為・パワハラ行為を否定している点です。これは弁明書の内容からも明らかです。
 C議員は弁明書について「『関係者が、作為的に歪曲〔わいきょく〕した作動を基に審査され、決議された誠に不条理』な決定である」(原文ママ)と主張しました。
 その理由を「困っている市民、又は、弱者と言われる市民に対しては、僅かでも協力しよう?協力しなければ?との、『その思い、すなわち共通の社会の正義感(良心)である』」(原文ママ)としています。
 また弁明書の結びでは、「当該審査会が、威厳のある崇高な組織であり得るには、『共存社会が、共通の認識で奉る社会正義(道徳心、倫理心)の尊重と確立です』。しかも『道義心・倫理心の源が、社会正義』であることを考えると、『社会正義に反する事実誤認の倫理審査において決定された決議こそ、倫理を論ずる以前に社会正義に反する』。よって『当該委員会が、令和6年4月○日決定された私への勧告は無効であらねば、崇高な政治倫理審査会に大きな汚点を残すことになる』」と、完全に無罪を主張しています。
 このように、C議員は「自らの言動は完全に正しい。絶対的に間違っているのは議会側である」という認識を強く持っていることが、本事案の最大の問題点です。
 

この記事の著者

編集 者

今日は何の日?

2025年 615

東海道線特急運転開始(大正元年)

式辞あいさつに役立つ 出来事カレンダーはログイン後

議員NAVIお申込み

コンデス案内ページ

Q&Aでわかる 公職選挙法との付き合い方 好評発売中!

〔第3次改訂版〕地方選挙実践マニュアル 好評発売中!

自治体議員活動総覧

全国地方自治体リンク47

ページTOPへ戻る