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2024.07.11 仕事術

第22回 どうする議会基本条例②

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第1次案提案後の取組み

 第1次案の本会議での委員長報告の後に、改めて全員協議会を開催し、1人会派も含む全議員に説明し、意見をいただきました。その中で、1人会派の方からある条文を付け加えてほしいという要求があり、新たに原案に付け加えることとしました。別の委員からは、そこまで1人会派に配慮しなくてもよいのではないかという意見もありましたが、最終的には全会一致での可決を目指していたので、そこは最大限配慮しました。
 また、議会では2例目となりましたが、「専門的知見」(地方自治法100条の2)を活用し、所沢市民でもあった廣瀬克哉・法政大学教授に、条例案についての評価と、折に触れてアドバイスをいただきました。廣瀬先生からは、特に執行部との間で論点となるポイント(閉会中の文書による質問、附属機関の設置、地方自治法96条2項に基づく議決事件の拡大)や今後の自治基本条例との兼ね合いなどについてのご指摘をいただきました。廣瀬先生にご助力をいただいたことで、独りよがりな条例案となることを免れました。また、地方自治法100条の2に基づく専門的知見の活用は、この調査をきっかけに、所沢市議会で多用されるようになりました。
 そして10月には、既に議会基本条例を制定していた会津若松市議会を視察のために訪問しました。
 会津若松市議会基本条例は、最高規範であるという条文がないこと、一方で附属機関の設置についての条項がありました。附属機関を設置できる根拠について質問したところ、議会基本条例と同時施行となった会津若松市議会議員政治倫理条例の条文中にある政治倫理審査会の委員の委嘱状について、もし附属機関条項がなければ市長名で発行することになるので、それを防ぐためにも必要とのことでした。
 会津若松市議会の特徴は、この条例制定で満足することなく、条例に規定された市民との意見交換会を積極的に開催していることでした。
 議会運営委員会に議会基本条例の素案についての説明も行いました。議会基本条例制定特別委員会の委員長である私と副委員長が第1次案説明のために、委員外議員として議会運営委員会に出席したのも初のことだったようです。このように、これまで前例になかった事例を、条例制定を通じて積み上げていきました。

執行部等との調整を経て議会原案へ

 執行部とも議会基本条例についての協議を行いました。法制チェックと、条文中にある市長や執行部に関する条項についての意向調査です。執行部からは、閉会中の文書による質問、附属機関の設置、地方自治法96条2項に基づく議決事件の拡大についての再考を求められました。特に附属機関の設置は、そもそも議会が執行部の附属機関のようなものなので、附属機関に附属機関を設置するのはなじまないのではないかという、極めて率直かつ実情に根ざした意見をいただきました。また、地方自治法上、議会に附属機関設置条項がないことも併せて指摘されました。
 この議会への附属機関設置条項の是非が、執行部との最も議論になったポイントでした。結果的に、廣瀬先生からもアドバイスをいただき、執行部からの異議申立てに対応する文言を前文案に付け加えることとしました。
 前文は、第1次案ではあらかじめ制定しないこと、第2次案になってから制定することとしていました。この点については、次回詳細をお伝えします。
 様々な議論を経て、12月議会で議会としての原案を作成し、本会議に報告しました。12月議会では、9月議会からの活動報告や修正点の報告の後、今回は前文も含めた第2次案(議会原案)を前回同様、議場で全て読み上げました。
 第1次案からの主な修正点は、以下のとおりです。
 削除したのは、9条(議会モニターの設置)についてです。これは、ある議員が強硬に反対したため削除しました。この項目は全部削除しました。その後の議会基本条例の改正により、現在は、議会モニターは条項として整備されました。
 両論併記であった10条(議員と市長等執行機関の関係)の2号その1、当該議員に対し「質問の趣旨の確認をすることができる」及び2号その2、当該議員に対し「反問することができる」。この両論併記の部分については、2号その2を採用し、2号その1を削除しました。
 同じく、10条(議員と市長等執行機関の関係)3号、市長等は、議員の質疑及び質問時間に配慮した簡潔な答弁をするよう努めるものとするということについては、議会運営委員会での協議をお願いすることとして、削除しました。
 14条(地方自治法96条2項の議決事件)全体については削除し、新たに別条例として分離し、その条例素案を次回までに提案することとしました。
 21条(議会事務局)3項、議会は、専門的な知識経験等を有する者を、任期を定めて議会事務局職員として採用する等、議会事務局体制の充実を図ることができる。この項目については、そもそも所沢市には任期付き職員採用の制度がなく、この条項は、当該条例の改正も必要となることから削除しました。
 26条(調査機関の設置)については、現在も地方自治法で規定されている公聴会や参考人制度の弾力的な運用で対応できることから、削除しました。
 また、30条(最高規範性)については、今後制定が予定されている、いわゆる自治基本条例との関係も考慮し、前文に趣旨を盛り込むことを検討することとし、削除しました。
 次回は、最終案制定に向けた住民意見聴取の試み等について報告します。
 

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