2024.07.10
第16回 小さな会社には年休制度はないか
3 行使(取得)の方法
前記2記載の要件を満たしただけでは、具体的な有給休暇日がいつなのかは確定しない。具体的な有給休暇日を確定するには、労働者側で、有給休暇日を指定する必要がある。この労働者による有給休暇日の指定を時季指定という。
もっとも、時期によっては、労働者による有給休暇の取得により、会社の事業の正常な運営を妨げることもあり得る(繁忙期等)。この場合に、会社側には、労働者の時季指定を認めないという時季変更権(労基法39条5項ただし書)が認められている。時季変更権を行使すると、企業は、労働者が指定してきた時季に有給休暇をとることを認めず、改めて時季指定をするよう求めることができる。
ただし、この「事業の正常な運営を妨げる」という要件は厳格に判断され、時季変更権は当然認められるものではないことに注意を要する。
4 年5日の有給休暇の取得義務
2019年4月、労基法の改正によって、全ての会社において、年10日以上の有給休暇が付与される労働者(管理監督者を含む)に対して、有給休暇の日数のうち年5日については、使用者が時季を指定して取得させることが義務付けられた。
この取得義務を確実に履行するために、有給休暇の計画的付与制度(有給休暇のうち、5日を超える分について、労使協定を結び、計画的に休暇取得日を割り振ることができる制度のこと。いわゆるお盆休み、年末年始休業等をこれに充てることができる)の活用も検討すべきである。
5 有給休暇の繰り越し
有給休暇は、法(あるいは就業規則)所定の要件を満たせば毎年発生し、その年度に未消化の有給休暇は、翌年に繰り越される。
しかし、有給休暇発生から2年経過すると時効によって消滅する(労基法115条)。
なお、未消化の有給休暇について、買上げ(買取)を行うこともある。これは、会社が労働者に対価を支払って、未消化の有給休暇を消滅させることをいう。
ただし、有給休暇の買上げは、原則として労基法39条に反して違法となり、6か月以下の懲役又は30万円以下の罰金が科せられる可能性があるので注意しなければならない(労基法119条1号)。例外的に買上げが認められるのは、①法定外の有給休暇を買い上げる場合、②時効によって消滅した有給休暇を買い上げる場合、③退職時に未消化の有給休暇を買い上げる場合である。