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2024.07.10 仕事術

第3回 議長が行ったセクシュアル・ハラスメントによる辞職勧告決議

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(3)辞職勧告決議の内容

 近年、ハラスメントに対する社会の意識が高まり、ハラスメントに対する批判は、ますます厳しさを増している。また、我が国における「女性の政治参画」は、他国と比べ遅れをとっており、本市においても、この「女性の政治参画」は、推進していくべき事項である。
 この「女性の政治参画」を推進するためにも、ハラスメント事案は、厳格に受け止めなければならない。さらに、本市議会では、以前に複数のハラスメント事案や政務活動費の不適切な処理が指摘され、事態の重大さを真摯に受け止め、襟を正し、信頼回復に努めなければならないという中で、令和5年9月○日に「B市議会議員政治倫理条例」(以下「条例」という)を制定したばかりである。
 審査の対象であるC議員は、「B市議会議員政治倫理条例の制定に向けた調査特別委員会」の委員長として、この条例制定の中心的立場であったほか、令和5年6月○日からは、B市議会を代表する立場である議長に就任している。その議員自らが、令和6年2月○日、市内で開催された祝賀会に来賓として招待され、議長の公務として出席していたにもかかわらず、その場においてハラスメント行為を行ったことは非常に責任が重いといわざるを得ず、酒席だからといって許されるものではない。
 令和6年3月○日のD議員の会派控室におけるC議員の発言は、D議員への謝罪の意や自らの過ちを認めて心からの反省をしているということが十分に伝わる内容とはいえず、女性議員は謝罪を受けたという認識をしていない。また、B市議会議員政治倫理審査会の事情聴取に応じるC議員の言動には、真摯な反省をしているとは思えない部分が随所にあった。C議員のD議員への一連の行為は、市民全体の代表者として品位と名誉を損なうものであり、条例第3条第1号及び第4号に違反し、政治的及び道義的な責任を免れることはできない。よって、当議会はここにC議員に対し、議員の辞職を勧告する。以上、決議する。

(4)C議長の弁明
 本事案に対するC議長の弁明は、「そんな表現を使ったとは思っていないが、男同士の会話で冗談半分に言ったのではないか」、「不適切といわれるのなら、不適切だった」、「握手は激励のつもりだった」などであり、セクハラについて否定を重ねています。
 また、令和6年4月臨時会において辞職勧告決議を下されたC議員(3月で議長を辞任)は辞職せず、「罪と罰の均衡を失している」と主張していました。これは明らかに「自分は悪くない」という認識を持っており、先述した「何が悪いかを理解していない」ということは、こういった発言の端々に表れています。
 D議員も「随分、見下されている感じがした。女性(である)議員はそういう対象なのか。軽んじられている」と証言しており、謝罪を拒否している理由はC議長に反省の色が見られないからでしょう。

(5)原因と対策
 本事案の原因は、間違いなくC議長のセクハラに対する認識が甘かった点が挙げられます。本事案に限らず、ハラスメントは「自分は悪くない」、「自分は正しい」という無意識の思い込み(アンコンシャス・バイアス)からくる言動がその原因の大半を占めます。
 アンコンシャス・バイアスは「無意識の思い込み」、「偏見」という意味です。人は基本的に、自分の価値基準はこれまでに経験してきたことや家庭環境、所属してきたコミュニティでの価値観がベースになります。年齢が高いほど旧来型の価値観を持っており、性別役割分担意識が強かったり、飲酒運転やハラスメントに対するコンプライアンス意識が低かったりします。
 このアンコンシャス・バイアスがハラスメントの原因であり、自らのアンコンシャス・バイアスを認識し、修正していくことが必要です。
 B市議会の場合、以前から複数のハラスメント事案や政務活動費の不適切処理などが問題視されており、令和5年9月に「B市議会議員政治倫理条例」を制定したばかりでした。しかし、条例制定を主導した立場のC議長がハラスメント事案を起こしています。このことから、条例制定だけで終わるのではなく、具体的にハラスメントを起こさないための研修を行う必要があるといえるでしょう。

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