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2024.07.10 公職選挙法

公職の候補者は選挙運動のため仮設住宅の住宅や集会所あるいはその敷地内で演説を行うことができるか/実務と理論

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3 設問の検討

(1)設問①について
 設問①は、仮設住宅が、法166条1号の規定により演説を行うことが禁止されていない「公営住宅」であるのか否かを問うものである。
 前述のとおり、同号の「公営住宅」には、公営住宅法上の公営住宅に類するものも含まれると解されているところ、仮設住宅は一般の住宅ではないが、復興の長期化が予想されることや入居者が一般の住民であることを考慮すると、その効用は公営住宅法上の公営住宅と同じであると考えられることから、それに類するものとして、同号の「公営住宅」に該当するものと解される。よって、仮設住宅は、法上演説を行うことが禁止されている建物からは除かれていることから、仮設住宅において演説を行うことは可能であると考える。
 また、仮設住宅には住宅のほかに集会所が設置されている場合もあるが、この集会所において演説が可能かどうかについても検討する。
 公営住宅法では、「公営住宅」は、同法2条2号において「地方公共団体が、建設、買取り又は借上げを行い、低額所得者に賃貸し、又は転貸するための住宅及びその附帯施設で、この法律の規定による国の補助に係るもの」と定義され、集会所は、同条9号の「共同施設」の定義(児童遊園、共同浴場、集会所その他公営住宅の入居者の共同の福祉のために必要な施設で国土交通省令で定めるもの」に含まれていることから、公営住宅とは区別されており、同法においては、集会所は公営住宅には含まれないと解される。
 一方、法上は、仮設住宅が「公営住宅に類するもの」に該当すると解されるところ、仮設住宅の住宅と集会所を区別し、集会所だけ含まれないとする合理的な理由は見当たらない。よって、仮設住宅に設置されている集会所も含めて該当するものとし、集会所においても演説を行うことは可能と解される。
 なお、仮設住宅で個人演説会を行う場合、法161条1項3号による施設として市町村の選挙管理委員会が指定を行えば、公営施設使用の個人演説会として開催することができる。また、同号の施設として指定しない場合においても、法161条の2の規定により、法161条1項に規定する施設以外の施設を使用した個人演説会として開催することができる。
(2)設問②について
 設問②は、仮設住宅の敷地が「街頭又はこれに類似する場所」に該当するか否かについて問うものである。
 前述のとおり、「街頭又はこれに類似する場所」とは、例えば、広場、公園、空地等施設の構内ではない場所と解されているところ、仮設住宅の敷地は、一般的には、仮設住宅に住んでいる被災者や支援者をはじめとして、多くの者が自由に行き来することができるものであろうから、実質的には広場等に近い態様で敷地が使用されていると考えられる。
 よって、ほかとの交通が遮断されているような態様であれば格別、一般住民が自由に出入りできる状況にあれば、法138条の規定により禁止されている戸別訪問に当たらない限り、一般的には、仮設住宅の敷地で行う演説は街頭演説に該当するものと解される。

4 おわりに

 ここまで、仮設住宅における個人演説会等について、法における選挙運動に係る規定を踏まえ、検討を行った。
 本問での検討が、読者の理解の一助となれば幸いである。

(※本記事は「自治実務セミナー」(第一法規)2024年5月号より転載したものです)

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