2024.07.10 公職選挙法
公職の候補者は選挙運動のため仮設住宅の住宅や集会所あるいはその敷地内で演説を行うことができるか/実務と理論
総務省自治行政局マイナンバー制度支援室 河部優真
1 はじめに
候補者が選挙で票を獲得するためには、選挙運動用自動車上における連呼行為や個人演説会、街頭演説など、言論による様々な選挙運動が行われるが、その方法等には公職選挙法(昭和25年法律100号。以下「法」という)上、様々な制限がある。
本問では、仮設住宅において公職の候補者が選挙運動のための演説を行うことができるか等について検討し、法における演説に係る制度理解を深める。
具体的には、公職の候補者は、被災者が居住している①仮設住宅の住宅や集会所(建物の中)、②仮設住宅の敷地内(建物の外)において、選挙運動のための演説を行うことができるかについて検討する。
なお、文中意見にわたる部分については、筆者の私見であることをあらかじめお断りしておく。
2 関係規定の整理
(1)個人演説会について
演説会とは、あらかじめ特定の候補者等の選挙運動のための演説を行うことを周知し、それを聞くことを目的として会場に集まっている聴衆に向かって演説を行うことをいうと解されている。
個人演説会は公職の候補者により開催することが認められており、その使用する施設の種類により、公営施設使用の個人演説会(法161条)と、公営施設以外の施設使用の個人演説会(法161条の2)とに分けられる。当該演説会においては、開催する公職の候補者の選挙運動のための演説をすることができるが、個人演説会を開催する場合、立札・看板の掲示規制など、法の一定の規制に服する必要がある。
また、法166条1号の規定により、国又は地方公共団体の所有し又は管理する建物においては、選挙運動のためにする演説及び連呼行為を行うことができないとされているが、「公営住宅」はこの建物から除かれている。同号の「公営住宅」とは、「公営住宅法(昭和26年法律193号)にいう地方公共団体が一般住民のための住宅用に供するもの及びこれに類するもの」と解されている。
(2)街頭演説について
街頭演説とは、街頭又はこれに類似する場所で、あるいはこれらの場所に向かってする演説をいう。「街頭又はこれに類似する場所」とは、例えば、広場、公園、空地等施設の構内ではない場所と解されている。
また、公職の候補者個人の街頭演説は、演説者がその場所にとどまり、選挙管理委員会が交付する所定の標旗を掲げて行う場合に行うことができるとされている(法164条の5第1項1号)。