2024.06.25 ICT活用・DX
第21回 小規模町村議会でもできる議会活性化の実践~鹿児島県知名町議会の議会からの「政策サイクル」の取組み~
「町村議会議員のなり手不足対策検討会」報告書
全国町村議会議長会は、2023年4月に執行された統一地方選挙において、無投票や定数割れが増加したことなどにより、町村議会議員のなり手不足が深刻化したことを受けて、2023年7月に「町村議会議員のなり手不足対策検討会」(委員長:江藤俊昭大正大学教授)を設置し、2024年3月に報告書をとりまとめた。
報告書では、なり手不足の原因の一つとして、議員のやりがいが住民に十分に浸透していないことが挙げられている。また、議会に対する住民の関心を高める方策として、広報活動の充実に加え、広聴活動である議会報告会・住民懇談会の開催が、最も有効な手立ての一つとしている。しかし、全国町村議会議長会の「町村議会実態調査」(調査時点:2023年7月1日現在、調査対象数:926町村議会)によると、住民懇談会・議会報告会を開催している町村議会は、218議会(23.5%)にすぎない。
住民懇談会・議会報告会は何のために行われるのか。それは、議会からの「政策サイクル」の起点にし、住民福祉の向上に資するためである。「政策サイクル」とは、住民懇談会・議会報告会で「住民との対話」を行って政策のタネを拾い上げ、それを議員間討議、「議員同士の対話」により政策に練り上げて首長に対し政策提言を行い、事業や予算へ反映させることである。こうした取組みを継続することで、議員のやりがいが住民に浸透することになると考える。
今回は、2023年6月から筆者が議会アドバイザーを拝命している鹿児島県知名町議会の議会活動の活性化、議会からの「政策サイクル」の取組みを紹介する。
鹿児島県知名町議会議員のメンバー
鹿児島県知名町議会の議会改革のきっかけ
知名町は、鹿児島市から南へ550キロメートルの離島、沖永良部島の西半分にある人口5,400人の典型的な条件不利地域の町である。
離島の足、日本エアコミューター
筆者が知名町議会と関わるきっかけとなったのは、日本生産性本部の紹介で、2021年10月にオンライン研修を行ったことである。その際、「議員間討議と対話」というテーマで、「議会基本条例」(以下「基本条例」という)に書かれていたが、これまで実施されていなかった「議員間討議」の意義と手法について講義をし、実際に「対話」による「議員間討議」を体験してもらった。その後、2022年4月、基本条例に規定されていたものの設置されていなかった「議会改革推進会議」が設置されたことで、今任期(2020年9月~2024年8月)の知名町議会の改革の取組みが始まった。
オンライン研修の様子
2022年5月、筆者は初めて知名町を訪問した。「議会基本条例の原点に立ち戻ろう」というテーマで、議員の皆さんを対象に講義とワークショップを行い、基本条例の条文どおりにできているかどうかを「対話」で考えた。その結果、知名町議会ではこれまで政策提言が全くできていないことに気づいてもらった。また、ワールドカフェ形式による町民との意見交換会に初めて挑戦した。「20年後の知名町の未来」をテーマに、JA青壮年部、商工会青年部、社協職員、女性連、役場若手職員等の町民と議員を合わせて25人が参加し、町民の方々から意見を聴いた。
1回目訪問時の議員研修会
初めての町民とのワールドカフェ
そこで出た町民の意見を参考に、常任委員会ごとに政策提言に向けて所管事務調査を行うテーマについて議論した。総務文教常任委員会は「未就学児支援」、建設経済常任委員会は「新規就農者支援」をテーマに、任期中の政策提言実施に向けた「政策サイクル」の取組みがスタートした。