2024.06.25 仕事術
第2回 市職員へのパワー・ハラスメントによる辞職勧告決議
ハラスメントを予防するためにはケーススタディが効果的
「労働施策の総合的な推進並びに労働者の雇用の安定及び職業生活の充実等に関する法律」(パワハラ防止法)や「政治分野における男女共同参画の推進に関する法律」(候補者男女均等法)の施行によって、多くの議会でハラスメント研修が行われるようになりました。しかし、単に「研修を聞いた」だけでは問題を根本的に解決することはできません。ここでは、ハラスメント研修の効果的な方法について紹介します。ご自身や会派の方々とも行える予防法ですので、ぜひ一度取り組んでみてください。
(1)政治分野の特殊性を加味した研修かどうかが重要
自治体で行われているハラスメント研修の多くは、企業研修を自治体版にアレンジしたものです。これは職員のハラスメント研修には有効ですが、議員向けには必ずしも最適とはいえません。
まず議員と職員の間には、明確な指揮命令系統が存在しません。しかし、あたかも上司であるかのように職員に対して命令する議員は数多く存在します。
また、今回の事例のように職員を「仲間だと思っていた」という認知の誤りを議員が持っている可能性があります。逆に、職員に対する指揮命令の権利があると誤認している議員もいます。このように「議員」という立場の特殊性を理解した研修を行わなければ、本質的な問題解決にはつながりません。
この特殊性を理解せずに研修を行っても、定義や判例についての知識は身につきますが、具体的な対応や解決策の提示ができません。この点を踏まえて研修内容を決定することが重要です。
(2)ケーススタディで職員との適切な関わり方を身につける
議員と職員が適切にコミュニケーションをとるためには、実際のやりとりをケーススタディとして取り上げ、その関わり方が適切かどうかを実践的に体験する必要があります。
効果的なのは、実際の職員からの声を匿名で集め、それぞれのケースについて議員同士で話し合い、その後に不適切な関わり方について解説する研修です。職員からの声を題材にすることで参加者に当事者意識を持たせることができるので、座学だけの研修よりも高い学習効果を得られます。
最近は「自分の言動が適切かどうかをチェックしたい」という要望が増えています。それに応えるために、ポリライオンではハラスメントかどうかをAIがチェックする「AIハラスメントチェッカー」を開発しました。
このAIハラスメントチェッカーは、多くの方が利用しているLINEを使用しているので、簡単に自分の言動をチェックできるのが特徴です。
AIハラスメントチェッカーは現在開発中の実証実験段階なので、どなたでも無料でご利用いただけます。ぜひセルフチェックや議会内・会派内での勉強会などにご活用ください。
参考:一般社団法人ポリライオン「AIハラスメントチェッカー」 https://www.polilion.com/checker
今回はA県B市議会での職員に対するハラスメント事例について解説しました。
議員と行政職員はより良い自治体づくりのために協力する関係にありますが、一般職と特別職という明確な立場の違いがあります。また、過剰な叱責や追及はパワハラにつながるため、職員との接し方には十分に注意しなければなりません。
そして何より、今回のように事案が雑誌で公表されると、自分だけでなく自治体のイメージも大きく毀損します。街をより良くするために議員になったはずが、街に大きなダメージを与えてしまうことは本意ではないはずです。
これからの地方議員には、ハラスメントに対する知識やハラスメントをしないための言動を身につけ、職員と協力しながら、より良いまちづくりを行うことが求められます。
政治分野のハラスメントがなくなるよう、私たちもサポートしてまいります。
◉ポリライオンが提供するプログラムについて
https://gnv-jg.d1-law.com/login/article/20240527/68786/7/