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2024.06.25 仕事術

第2回 市職員へのパワー・ハラスメントによる辞職勧告決議

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(3)辞職勧告決議の内容

 B市政治倫理条例2条1項1号では、議員及び市長等は、市民全体の代表として、その品位と名誉を損なうような一切の行為を慎み、その職務に関し不正の疑惑を持たれる恐れのある行為をしないこととあり、ハラスメント行為は、まさにB市政治倫理条例に抵触するものである。
 この行為により、市職員及びご家族の人生設計を狂わせたとともに、議会の信頼を失墜させた責任は、議員としての資質を持ち合わせていないといわざるをえず、厳しく非難されるものである。 
 よって、議員の職を辞すべきであり、ここにC議員の議員辞職勧告を決議する。

(4)C議員のその後
 2023年3月議会において辞職勧告決議を下されたC議員は辞職せず、同年4月に実施されたB市議会議員選挙において立候補しました。しかし、2019年の同市議選では5位と上位当選していたものの、2023年の同市議選においては得票数が3分の1程度となり落選しました。現職議員で唯一の落選者であり、市議会議員によるハラスメントに対する市民の評価をよく表している結果といえます。

(5)原因と対策
 第三者委員会の意見書を精読すると、C議員の言動の中には正当性のある叱責もいくつか見られます。つまり、本事案においてはC議員だけが悪いともいえないのです。
 しかし、いくら正当性のある叱責でも、頻繁な詰問や叱責を繰り返した結果として職員を休職に追い込んでしまったことは大きな問題です。
 C議員は怒りの強度が高く、ドアを蹴るなどの威嚇行為も行っていることから、本人は無自覚にパワハラを行っていたと推測できます。いくら自分自身が正当だと考えていても、強度の高い叱責を繰り返すことはパワハラに該当します。
 怒りの強度が高いと、それだけで相手に大きな傷を与えます。特に怒りの感情が激しい人は、十分に注意しておきましょう。
 また、今回の事案を受けてB市職員に向けて行われた「議員からのハラスメント・不当要求に対するアンケート」では、回答した職員の24%が「ハラスメント又は不当な要求を受けた」と回答しています。このアンケートは非公開のため具体的な内容は公表されていませんが、本事案のようなハラスメント行為が頻繁に行われていたことは容易に想像できます。
 本アンケートは議員も対象に行われていましたが、職員の回答率74%に対して議員の回答率45%と、ハラスメント事案の渦中にあるにもかかわらず多くの議員が無関心な点も、ハラスメントがなくならない大きな原因の一つです。
 先述したように、「自分たちには関係がない」と思っている議会ほど、ハラスメントの問題が見過ごされている点も大きな原因で、第三者委員会の意見書でも「社会的な傾向に相反して、議員のハラスメント問題に対する認識が不十分であることは、ハラスメント行為発生の原因として指摘せざるをえない」と記載されています。
 このような状況における対策の中で最も重要なのは、「議員の意識変革」です。ハラスメント研修を行い、ハラスメントとは何なのか、叱責とハラスメントの違いや、職員と議員の立場の違い、どのような行為がハラスメントに該当するかなどを基本から学ぶ必要があります。
 B市議会の場合は、アンケート結果からもハラスメントに無関心な議員が多いことが立証されているので、「ハラスメント根絶条例」の制定だけでなく、研修の義務化などにより具体的で実効性のある研修が必要でしょう。

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