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2024.06.25 仕事術

第2回 市職員へのパワー・ハラスメントによる辞職勧告決議

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A県B市議会のパワハラ事案

 今回のケースは、当選5期で議長経験もあるベテラン議員による市職員へのパワハラの事案です。自身が関わる交流事業の懇親会費用を公費負担させようと市職員に強要したことからパワハラ事案となりました。今回のケースは、発覚の経緯や事案後の顛末まで、現代の議会でハラスメントを行うとどうなるかがよく分かる事例です。順を追って解説していきましょう。

(1)本事案の概要

 2022年にA県B市のC議員は、B市と海外事業者の国際交流事業におけるB市側の主導的役割を担っていた。そして、B市内にある教育機関と海外事業者との連携協定もC議員が主導。このときにB市の担当として連携協定に関わっていたD職員に対して、C議員は度重なる叱責やパワハラを行った。また、国際交流事業後に行われる懇親会の費用を公費負担とすることを担当のH職員などに要求。結果として、一連の対応に当たっていたD職員は長期休養した。
 事態が発覚したのは、この事案を県内の政治・経済情報を取り扱う月刊誌が記事として取り上げたからである。そして本事案の原因究明のために開催された第三者委員会の調査では、この月刊誌の内容は全てが事実とはいえないものの、C議員によるハラスメント行為があったと認定された。
 B市議会では月刊誌の発売直後に「B市議会ハラスメント根絶条例」を制定。パワハラが認定されたC議員には、2023年3月議会で辞職勧告決議が下された。

(2)本事案の問題点
 この事案は、C議員により市職員に対して度重なるパワハラが行われているとの指摘があり、月刊誌の発行によって事件が広く知られることになりました。そして、報道後に行われた第三者委員会の調査においては、2022年4月と同年5月のパワハラの2件が具体的に認定されました。また、C議員が頻繁に職員を呼び出し、「お前」等と呼び捨てにしたことや、感情に任せて叱責したり追及した行為も併せて認定されています。
 これらの行為は、市職員に録音を決断させるほどの強度であったことが第一の問題です。そして、同調査においてC議員がパワハラを行った市職員に対して「自分と一緒に事業を行う仲間だと思っており、親しみを込めて『お前』とか『バカ』とかと言ったかもしれない」と供述しています。これは、C議員がどのような言動がハラスメントに該当するかを理解していないことの証明といえるでしょう。現代社会において力関係が優位にある者が行うこれらの言動はハラスメントに当たるということに、特に議員の方々は留意しなければなりません。
 一方で、C議員が市職員を叱責した案件の中には、職員の職務遂行に問題があるケースも存在しており、C議員の全ての叱責がハラスメントとして認定されたわけではありません。叱責の内容が客観的に正当であると認められれば、パワハラとは認められません。
 ただし、議員は常に役所において職員より優位な立場にあるということは念頭に置かなければなりません。自分は仲間だと思っており、親しみを込めて接していても、市職員から見れば議員は首長や教育長などと同じ特別職であり、明確に上下関係が存在します。このような無自覚なハラスメント行為は、発覚していないだけで、全国で多数の事例があることにはくれぐれも留意しておく必要があります。
 このことを裏付けるように、本事案発覚後に行われたB市職員に対するアンケートで、C議員だけでなく他の議員からのハラスメントも職員に対して日常的に行われていることが明らかになりました。
 「自分たちの議会は問題ない」と思っている議会こそ、無自覚にハラスメントが行われている可能性があります。自らを律して、ハラスメントのない議会づくりを行うことが重要です。

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