2024.05.27 仕事術
第1回 議会事務局員への傷害事件
ハラスメントを予防するためにはケーススタディが効果的
パワハラ防止法や候補者男女均等法の施行によって、多くの議会でハラスメント研修が行われるようになりました。しかし、単に「講義を聞いた」だけでは問題を根本的に解決することはできません。ここでは、ハラスメント研修の効果的な方法について紹介します。ご自身や会派の方々とも行える予防法ですので、ぜひ一度取り組んでみてください。
(1)政治分野の特殊性を加味した研修か
多くの「ハラスメント研修」は、ハラスメントの定義や判例を解説するものが中心です。議会向けに行われる研修では、公務員のハラスメントに関する事例を紹介するケースが珍しくありません。
しかし政治分野、特に議会というのは特殊な世界です。まず、本来は議員間の立場は対等なので、厚生労働省の定義する「職場のパワハラ」を議会において適用するかどうかという認識の統一から始めなければなりません。
多くの議会内・会派内・政党内のハラスメント事案に関わってきましたが、例えば議会内でのハラスメントについて加害議員は「立場は対等なのだから、嫌なら嫌と言えばいい」と思っているケースは珍しくありません。ですが、地方自治法上で定義された立場としては対等かもしれませんが、議会内には「得票数」、「当選期数」、「年齢」、「役職」など上下関係を決める要素が厳然として存在します。また、有権者との関係性の中でもハラスメントが発生するのが政治分野の特徴です。
この特殊性を理解せずに研修を行っても、定義や判例についての知識は身につきますが、具体的な対応や解決策の提示ができません。この点を踏まえて研修内容を決定することが重要です。
(2)ケーススタディで当事者意識を身につける
ハラスメント対策を効果的に行うためには、実際の事例や身の回りで発生した事例についてのケーススタディを行うのが最適です。特に「これはハラスメントかどうか判断しにくい」というケースについて話し合うことで、「どこがハラスメントの境界線か」を判断する力が身につきます。
ハラスメントのない議会をつくるためには、
① 議会内で「これは絶対にやってはいけない」という基準を設ける
② ハラスメントの境界線がどこにあるかを議員が理解する
③ 問題が発生した場合の調査体制や再発防止用のプログラムをあらかじめ用意する
④ 定期的な研修により、議員同士が共通認識を持っておく
という4点が重要です。
これまで、ケーススタディを行う場合に「何がハラスメントか判断するのが難しい」という意見をいただきました。そこで、ポリライオンで研修を行う場合には、ハラスメントかどうかをAIがチェックする「AIハラスメントチェッカー」を使用しています。
このAIハラスメントチェッカーは、多くの人が利用しているLINEを使用しているので、簡単にチェックできるのが特徴です。
AIハラスメントチェッカーは現在開発中の実証実験段階なので、どなたでも無料でご利用いただけます。ぜひセルフチェックや議会内・会派内での勉強会などにご活用ください。
参考:一般社団法人ポリライオン「AIハラスメントチェッカー」 https://www.polilion.com/checker
今回はハラスメントに関する基本的な紹介と、A県B村議会でのハラスメント事例について解説しました。
地方議員の方々にとってハラスメントはただの問題ではなく、多様化する社会の中での公人として住民に対する模範となるために必要なテーマであり、地域住民や公務員の心理的な安全を守るために避けては通れないテーマです。
何より、候補者男女均等法の施行により「知らなかった」では済まされない社会環境になっています。自治体・議会としての対応が始まっていなければ、早急に対策を講じましょう。
今回の連載を通じて、ハラスメントの基本的な理解と具体的な対策について学び、実際の行動に移すことができればと思います。
議員の皆さんが示す姿勢やリーダーシップが、より良い社会を創造し、最終的には市民からの信頼につながることでしょう。公人としての職責を果たし、全ての住民が尊重される社会を目指していけるよう、私たちもサポートしてまいります。