2024.05.27 仕事術
第1回 議会事務局員への傷害事件
A県B村議会の事案について
ひとたび地方議会でのハラスメントが事案化すると、社会に大きな影響を与えます。第1回目である今回は、実際に発生したハラスメント事例(議会事務局員への傷害事件に関する事案)と、その問題点を解説していきます。
(1)本事案の概要
2023年にA県B村のC議長は、村議会事務局職員の歓送迎会に参加。その後、公用車で帰宅する際に運転していた女性職員を後部座席からたたき、髪を引っ張りシートベルトで首を締めるなどしてけがを負わせた。事件の翌月に傷害罪で逮捕され、罰金20万円の略式命令を受けた。また、村議会の特別委員会では女性職員へのセクハラも認定された。
村議会で3度目の議員辞職勧告が可決されたことを受け、辞職願を提出。車に同乗していたD副議長 も「事態を防げなかった」として辞職勧告が決議され、議員辞職した。
(2)本事案の問題点
本事案は、そもそも傷害事件として逮捕されているためハラスメントの領域を超えています。議会事務局職員に対して暴力を振るうことは、公人としてあるまじき行為であるということに疑いの余地はありません。また、議長が公務ではない会合の送迎を職員に行わせていることは、議長と職員という立場の違いを背景にしたパワハラです。特別委員会では女性職員へのセクハラも認定されており、今回発覚した事案以外に様々な職員にハラスメント行為を繰り返してきた可能性も否定できません。
この仮説を裏付けるように、本事案では多岐にわたる問題点が挙げられますので、それぞれ紹介していきます。
- 公務ではないにもかかわらず、正副議長の主催する歓送迎会の送迎のため公用車が使用され、女性職員が夜11時まで拘束されていた。
- 事案発生から3日後に、被害女性に「お礼」と称して1万円分の商品券を渡しており、金品によって問題解決を図った(公職選挙法違反)。
- 事案発生時の録音データが入っていたUSBを破壊した。
- 事件発覚前にドライブレコーダーの録音データを消去させていた。
- C議長は後援会と称して政治活動を行っていたが、県の選挙管理委員会に届出が行われていなかった。
- 特別委員会の中で別の女性職員に対する性的な発言が認められた。
- 車内で事件発生時にC議長の隣に座っていたD副議長が、C議長の逮捕を受けて開かれた記者会見で「分からない」、「知らない」、「記憶にない」との回答に終始し、大きな批判を受けた。
このように、事案発生から辞職勧告決議までの全てのプロセスにおいて不適切な対応が見られます。