2024.05.27 仕事術
第1回 議会事務局員への傷害事件
ハラスメントとは?
まずはハラスメント対策の必要性と定義、ハラスメントの種類についておさらいしていきましょう。
ハラスメント対策が必要となった背景には、大きく三つの理由があります。それぞれ解説していきます。
(1)働く人の属性と働き方が多様化している
一つ目の理由は、働く人の属性が多様化しているからです。代表的な事例として、女性の働き方の変化が挙げられます。現在、「セクシュアル・ハラスメント」(以下「セクハラ」という)は大きな問題であるとの共通認識が持たれていますが、これは女性就業者が増え、セクハラを容認しない社会環境になったからです。
出典:内閣府「男女共同参画白書 令和4年版」(https://www.gender.go.jp/about_danjo/whitepaper/r04/zentai/html/zuhyo/zuhyo02-01.html)
図1 女性就業者の推移
(2)社会全体のコンプライアンス意識が向上している
二つ目の理由は、近年特に企業において「コンプライアンス」が重視されていることです。コンプライアンスとは、「法令遵守」のことです。これに加えて企業の社会的責任や企業倫理も問われる時代になりました。この流れは行政や議会にも及んでおり、社会全体でハラスメントを認めない風潮がつくられるようになりました。
図2 企業と社会全体のコンプライアンス意識が向上
(3)ハラスメントに対する法律が施行された
自治体及び地方議会がハラスメント対策に取り組む必要がある絶対的な理由として、ハラスメントに関する法律が施行されたことが挙げられます。
ハラスメントに関する法律は、1997年に「男女雇用機会均等法」(通称:均等法)において女性に対するセクハラへの配慮が明記され、2006年には男女に対するセクハラ防止措置が義務化されました。そして、2020年には「労働施策の総合的な推進並びに労働者の雇用の安定及び職業生活の充実等に関する法律」(通称:パワハラ防止法)が改正され、2022年からは中小企業を含めた全ての企業にパワー・ハラスメント(以下「パワハラ」という)防止措置の義務化が行われています。
議会においても、2021年に「政治分野における男女共同参画の推進に関する法律」(通称:候補者男女均等法)が改正され、「国・地方公共団体の責務等の強化(3条等)」、「環境整備(新8条)」、「セクハラ、マタニティ・ハラスメント(以下「マタハラ」という)等への対応(新9条)」などの条文が設けられました。特に自治体においては、ハラスメント対策が新たに義務化されています。
つまり、自治体や議会においては「ハラスメント対策をやったほうがよい」ではなく、「ハラスメント対策をしなければならない」という状況になりました。まだハラスメント対策を実施していない自治体や議会は、法令違反の状態を放置しているのと同じです。早急に対策を始めましょう。
図3 政治分野における男女共同参画の推進に関する法律の改正