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2024.05.13 仕事術

第20回 どうする常任委員会③

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元所沢市議会議員 木田 弥

 前回は、請願審査や陳情審査について検討しました。今回は、請願審査に当たって、請願者の意見をどのように審査に反映させるのか、また請願文書だけでは表せない住民の切なる思いを議事録に残す方法についても検討します。

請願者に発言を認めている議会は約4分の1にすぎない

 全国市議会議長会の「市議会の活動に関する実態調査結果:令和4年中」によれば、令和4年に市議会において請願が採択された件数は、「採択」、「趣旨採択」、「一部採択」を含めて889件。全市議会に提出された請願が2,350件ですから、何らかの形で採択された請願は約38%です。すべての請願が採択されるということはありえないので、予想以上に採択されているというのが私の印象です。もっとも、この数字には、実態としては否決に近い「趣旨採択」68件や「一部採択」26件も含まれていますから、おおむね3割程度が採択されているといったところでしょうか。
 請願が採択されなかったとしても、請願を提出した住民の意見を議会の場に伝えることができれば、住民の問題意識が議会において表面化され、地域の課題として認識されることになりますから、一定の意義があります。
 しかし、実際には、そうした機会を与えられることもなく、処理されてしまう場合も多いようです。
 早稲田大学マニフェスト研究所の議会改革度調査2022によれば、「請願者の発言が認められており、発言があった」議会は282議会、「請願者の発言が認められているが、発言がなかった」議会は84議会でした。調査に対して回答のあった議会数は1,416議会で回答率は79.2%。回答があった議会を分母とした場合、請願者の発言が認められている議会は約26%。回答がなかった議会では、発言が認められている議会はさらに少ないと考えてよいので、およそ4分の3の議会では請願者の発言が認められていないと考えてよいでしょう。
 さらに、請願者の発言が直接、議事録に掲載される議会となると、もっと少なくなります。同じく、早稲田大学マニフェスト研究所による議会改革度調査2021によれば、「請願・陳情の提出者に発⾔を求めた(会議中)」は271議会となっています。このときの回答数が1,355議会ですから、会議中に請願者及び陳情者に発言の機会を設けている議会は、約2割にとどまっていることになります。
 所沢市議会もかつては、請願の審査を実施する際には、紹介議員と意を通じた議員が「ここで請願者もおいでになっているので、休憩をとって請願者のご意向をお聞きしたいと思います」と提案。休憩時に、請願の趣旨などについての説明を聞き、簡単な質疑応答もその場で行っていました。
会議の前後や休憩中の請願者の発言を、委員長が、本会議での委員長報告で丁寧に報告すればそれで議事録に記載されるという考え方もあります。しかし、あくまでも休憩中の発言であるため、所沢市議会では議事録に残されませんし、委員長も報告しません。あるいは、紹介議員などがしっかりと趣旨を説明すれば事足りるという考えもあるようです。やはり請願者が希望される場合は、委員会に正式に出席して発言していただくことが、本来あるべき姿であると思います。
 さて、正式に出席いただくとはどういうことかといえば、現状の地方自治法(以下「自治法」といいます)を素直に解釈するとなると、参考人として招致する以外の方法は、私は考えつけません。ただ、参考人として招致するには、非常に煩雑な手続が発生します。

議会基本条例の制定により請願者を参考人として招致し、意見を聴くことに

 所沢市議会では、請願者の意見を議事録に残る形で表明することができるように、制度と運用を改めました。そのきっかけとなったのが、平成21年の議会基本条例の制定です。同条例7条では、以下のように規定しました。
 

(市民参加及び市民との連携)
第7条 議会は、会議を原則公開とする。
2 議会は、本会議及び委員会(常任委員会、議会運営委員会及び特別委員会をいう。以下同じ。)においては、公聴会制度及び参考人制度を十分に活用して、市民の専門的又は政策的識見等を議会の討議に反映させるよう努めるものとする。

 また、自治法115条の2では、次のように定められています。

第115条の2 普通地方公共団体の議会は、会議において、予算その他重要な議案、請願等について公聴会を開き、真に利害関係を有する者又は学識経験を有する者等から意見を聴くことができる。
② 普通地方公共団体の議会は、会議において、当該普通地方公共団体の事務に関する調査又は審査のため必要があると認めるときは、参考人の出頭を求め、その意見を聴くことができる。
 所沢市議会基本条例7条2項は、自治法115条の2に沿った内容となっています。もっとも、自治法は参考人からの意見聴取が「できる」となっており、所沢市議会基本条例は、「努める」となっています。
 ちなみに、自治法115条の2は、平成24年に新設された条項です。このときは同時に109条も改正されています。このときの改正のポイントは「本会議においても、公聴会の開催、参考人の招致をすることができることとする」(1)ものでした。
 そのため、平成21年時点では、委員会での公聴会の開催、参考人の招致を定めた条文は、自治法109条4項・5項に書かれていました。
 一方、議会基本条例をいち早く制定した北海道栗山町議会の議会基本条例では、町民参加及び町民との連携を定めた4条4項で「議会は、請願及び陳情を町民による政策提案と位置づけるとともに、その審議においては、これら提案者の意見を聴く機会を設けなければならない」として、より積極的に意見聴取の機会を「設けなければならない」と義務化しています。
 所沢市議会は、この条項について所沢市議会基本条例に取り入れるかどうかを検討しましたが、ここまで踏み込んだ表現にはしませんでした。当時の理由としては、現状において休憩中に、請願の提案者の意見を聴くことが委員会の運用として通例となっていたため、立法事実としての必要性が低かったこと、意見を聴くのであれば、所沢市議会基本条例7条の2及び当時の自治法109条4項・5項にのっとって、参考人として招致する条文で対応すればよいと判断しました。

 

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