2024.05.13 医療・福祉
第4回 地域共生社会の鍵となる金銭管理の支援~日常生活支援事業をめぐって
ここまでをまとめると、①この事業を必要としている人は増加の一途だった、②しかし、予算の都合上、利用者数が伸び悩んでいる──といえそうです。それは、裏を返せば、「必要なのに利用できない人がいる」ということではないでしょうか。
なお、この事業は相談の受付や支援計画の作成等を行う「専門員」と、その専門員の指示の下で具体的な支援を行う「生活支援員」に分かれます。これら専門員と生活支援員の過不足状況について、「平成30年度日常生活自立支援事業実態調査報告書」(2)では、以下のようにあります。
「『本事業のニーズ(潜在的なニーズも含む)に対して専門員の人数は充足していますか』との問いに対して、『不十分である(体制が不足している)』が54.1%と半数以上にのぼった。……市区町村別に回答状況を見ると、特別区では87.0%、指定都市の区では83.3%、市では66.6%が『不十分である』と回答している。」(下線筆者)
出典:全国社会福祉協議会「日常生活自立支援事業の今後の展開に向けて~地域での暮らしを支える意思決定支援と権利擁護(平成30年度日常生活自立支援事業実態調査報告書)」(2018年)(https://www.shakyo.or.jp/tsuite/jigyo/research/20190419_nichiji.html)
図4 専門員の体制
また、「生活支援員」については、次のようにまとめています。
「全体では75.4%の社協が『課題がある』と回答した。市区町村別に見ると市・区部で『課題がある』という回答の割合が高くなっているが、町村でも6割以上が『課題がある』と回答した……。課題の内容としては、『生活支援員として適性を備えた人材の確保』が最も多く53.9%、次いで『利用者増に応じた生活支援員の増員』40.9%であった……。人数の確保も必要とされているが、それ以上に生活支援員として求められる適性を備えた人材を確保することが課題として強く認識されていることがうかがえる。」