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2024.04.25 仕事術

第19回 どうする常任委員会②

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陳情を請願と同様に扱ってよいのか?

 所沢市議会は、陳情に対しては基本的に塩対応です。先ほどの調査では、「請願と同様の扱いをしなかった陳情」件数が9,881件と示されていますので、この中に所沢市議会も分類されます。さらに、「請願と同様の扱いをしなかった陳情の処理状況」という調査結果も示されており、「陳情書のコピー配布」が521件(73.0%)と最も多く、以下「陳情書の文書表等配布」が133件(18.6%)、「所管委員会のみの審査」70件(9.8%)、「その他」229件(32.1%)となっています。所沢市議会は「陳情書のコピー配布」に該当します。「陳情書の文書表等配布」は、陳情書の内容はコピーせず、陳情書のタイトルだけを表にして配布するということでしょう。「所管委員会のみの審査」は、本会議では一切扱わずに、所管委員会のみの審査で対応する方法のようです。請願の場合は議会として受けて、その後に所管委員会に付託され、さらにその結果について本会議に報告し、場合によっては本会議で採決する可能性もあります。「請願と同様の扱いをしなかった陳情の処理状況」も様々なバリエーションがあることが分かります。
 陳情も請願と同様に扱う議会の方が、住民に対してより親切で民主的な印象を持たれるかもしれません。しかし、私はそうは思いません。自らの執行部に対する、あるいは議会に対する主張を実現させようとするならば、その合理性や必要性を示して、住民の方も議員を説得することが重要です。私は、与えられた請願という権利を所与のものとせず、戦ってこそ権利は守られるという立場に立つからです。基本的には、請願の紹介議員は一人いればよいわけで、住民の代表たる議員の一人も説得できない内容について、紹介議員なしでも議会で論ぜよという理屈には賛同しません。
 私は、請願の紹介議員を頼まれた場合、その請願内容が私の議員としての基本的な考え方に沿う内容と判断した場合は、極力、請願の採択を目指して、請願内容について請願者と文面を調整するなどしてきました。そのため、住民の方が持ってこられた原案を大幅に修正する場合もあります。ともすれば住民の方の案は、行政のできること、できないことや、全体のバランスを無視して、その思いをそのままに表現されています。私が関与した例としては、ある土地について、緑地保護の観点から、土地所有者からの買取りと公有地化を望む内容でした。しかし、少なくない数の住民の方々が、相続などの発生に伴い、特に市街化調整区域の自然緑地としての公有地化と買取りを望まれます。
 なぜ、その土地が他の相続に絡む公有地化と比較して、公有地化され買い取られなくてはならないのか、説得力のある理由が求められます。そのため、単なる公有地化ではなく、それまで所沢市にはなかった「環境創造体験型野外施設(プレーパーク)設置のお願い」という請願にすることとしました。請願者は、公有地化後はそのまま緑地として保護するのではなく、子どもたちが自由に自然と触れ合いながら遊べるプレーパークのようなものの設置を目指していたからです。
 このときは様々な事情もあり、力及ばす採択に至りませんでした。こういった請願は往々にして保守系議員の反対に遭うのですが、このときは、普段はこういった内容に賛成の立場の議員が反対に回りました。請願代表者と反対した議員の人間関係の複雑さが原因のようでした。そこは、私も読み間違ってしまいました。結局、この請願を提出された請願者と関係者は独力で土地を買い取り、プレーパークに近い、子どもたちが遊べる空間をつくられました。
 上記の例のように、請願であれば、住民の方の願いを、執行部も納得しやすく、かつ他の議員の賛同も得やすい形に、紹介議員が調整することができます。こうした手順を踏むことによって、請願を、住民要望を起点とした政策提案として扱っていくことが可能になります。陳情では、こうしたプロセスを経ることなく、一歩間違えると、住民の方の独善的な内容となってしまう可能性もあります。しかし、陳情の中にも、「もう一工夫して請願として内容を整えて扱えれば、場合によっては採択の可能性もあるのになぁ」と思うものもあります。あるいは、事実関係などが理路整然と整理されていた内容の陳情は、そのまま一般質問として利用させていただいたこともあります。
 私が絶対に受理しなかった請願は、意見書の提出を求める請願です。今でも多くの議会で、そういった類いの請願が出されて採択されているようですが、この請願の問題は、特に所沢市議会の場合、意見書は全会一致原則であるため、もし請願が採択され、その請願に基づく意見書案が議会運営委員会に提出されたとしても、議会運営委員会や本会議で反対が出れば意見書は提出されないこと、加えて意見書の内容についても、基本的に意見書案は議員が作成しますし、全会一致を目指す過程で文言修正も必要になるため、請願者が求めるような意見書でなくなる可能性もあることです。そういった矛盾を抱えているので、意見書の提出を求めるならば、請願の制度を経由することなく、直接議員に働きかけるのがシンプルで齟齬(そご)がないと考えます。意見書を求める請願を出された住民の方から、このことについて所管委員会で議論する機会をつくってほしいという意向を聞いたことがありますが、それならば、その問題を当該委員会で特定事件として取り上げて議論すればいいだけのことと思われます。

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