2024.03.25 政務活動費
第9回 自動車のリース料
(2)自動車リース契約の形態による支出の具体例
自動車リース契約については、自動車の購入ローン契約に近いものであるとして政務活動費からの支出が認められなかった広島高岡山支判令和2年9月10日がある。
議員が5年間にわたって月額7万2,000円、総リース料支払額が432万円で途中解約ができない自動車リース契約を締結し(自動車の車種はトヨタ・クラウンロイヤルサルーン)、そのうちの5か月分の2分の1のリース料を政務活動費から支出した事例で、当該リース契約はリース契約終了後、借主である議員が、自動車を返却する、又は自動車のリース期間を延長する、あるいは自動車を買い取るという選択肢が付いたものであった。いわゆるファイナンスリース契約のうちの所有権移転リース取引の一形態であるといえる。このリース契約期間が5年であり、借主の議員の側から途中解約できず、総リース支払額が432万円という高額なものであり、さらにリース期間満了時において借主である議員が自動車を買い取るという選択肢もあることから、その実質は自動車の購入ローン契約に近いものであるといわざるを得ないとして、当該自動車が政務活動のために使用されることは考えられるとはいえ、個人資産形成につながる当該リース契約に係るリース料を政務活動費から支出することは違法であると判断された。
これに対し、広島高岡山支判平成29年3月30日では、同様の自動車リース契約であってもリース契約満了時に直ちに自動車を返還すべき義務があるだけで、リース期間満了時における残価及びその清算方法についての定めがなく、当該残価を支払ったときには自動車の所有権を取得することができる旨の定めもない場合、当該リース料は先述のリース契約と異なり、リース期間満了時までの間、目的物たる自動車を利用することの対価と評価するほかなく、これを自動車のローンの支払と同視することはできないとして、リース料の総額が高額であるなどの事情を考慮してもリース料の支払が使途基準に適合しないということはできないとして、政務活動費から50%を支出することは適法であると判断した。
この二つの判例の大きな違いは、リース契約終了後の自動車の所有権移転に関する契約の有無によるものと考えられ、個人の資産形成となるかどうかで判断が分かれたものであるといえる。
なお、東京高判平成30年4月18日では、議員が契約していたリース契約がいわゆる残価設定型クレジットであり、当該議員がリース契約で定められた最終支払月の1か月前までに自動車会社に車両の返却を申し出て、車両を引き取ってもらうことができる旨の約定があり、実際、当該車両を引き取ってもらったことから、その実質はリース契約に準じたものということができ、車両の所有権が議員に移転しておらず、議員が当該車両を政務活動以外に利用していた事実があるとしても、そのことを考慮して分割支払額の85%に当たる額に政務活動費等を充当するにとどめており、さらに85%未満の割合でしか政務活動に使用していなかったことを認めるに足りる証拠もないことから、使途基準に合致しない違法な支出でないとしている。