2024.03.25 政務活動費
第9回 自動車のリース料
明治大学政治経済学部講師/株式会社廣瀬行政研究所代表取締役 廣瀬和彦
自動車のリース料
(1)総論
自動車は、政務活動のための移動手段として議員の政務活動の用に供され得るものであり、これに係る経費は、政務活動と一般的な関連性を有するものと認められ、政務活動費条例における使途基準の一つとして位置付けることがふさわしいものであるといえる(名古屋高判令和5年3月15日同旨)。
そのため自動車の利用形態の一つである自動車のリース契約に基づく経費の支出も、その目的が政務活動としての移動手段として使用されるのであれば支出は可能であるといえる。
ただし、議員の活動は、政務活動のほかにも、政党活動や後援会活動など多岐にわたるものであり、これらの活動のために自動車を使用することも想定されるが、自動車に係る経費は、通常、一定期間の利用に対する対価又は経費という形で生ずるものであって、個々の政務活動との直接的な対応関係を明らかにすることは事実上困難である。また仮に、その利用時間や利用割合等に応じた対応関係を想定できるとしても、これを逐一明らかにすることは、時宜に応じた的確な政務活動の実施に支障を来し、地方自治法及び政務活動費条例が政務活動費の交付を定めた趣旨に反することにもなりかねないとしている。
つまり、自動車のリース料を支出するに当たっては、個々具体的な使用に基づく政務活動費の支出を立証することは、その煩雑さなどから現実的に困難であるとして、原則として適切な按分率での支出を想定しており、その按分率は政務活動とその他の議員活動という区分けの中で50%を限度とすることが妥当であると考える。
なお、自動車を使用するに当たり、リース契約をリース会社と締結し、当該経費を政務活動のために使用したのであれば支出することは可能となる。
リース契約とは、ユーザーにとって必要な機械等について、ユーザーが直接購入するのではなく、リース会社が購入し、ユーザーはリース会社に毎月一定のリース料金を支払うことで機械設備を借りるという仕組みの契約形態をいう。そしてリース契約は、ファイナンスリースとオペレーティングリースに大別され、多くはファイナンスリースが用いられており、そのファイナンスリースのうちでも、所有権移転リース取引と所有権移転外リース取引がある。
そのため、リース契約には様々な種類があり、最近多いものとして、残価設定型クレジット、ファイナンスリース契約等が挙げられるが、複雑化している。当該リース契約が資産形成につながるものかどうかで、政務活動費からの支出が認められるかどうかが判断されることとなる。
さらに、自動車リース料に含まれる車両の維持管理に係る経費を含めることが許されるかどうかも争点となることがあり、近時の判例では車両の維持管理に係る経費の政務活動費からの支出が、按分率の適用に基づく中で認められる傾向にあるといえる。