2024.03.25 コンプライアンス
第92回 地方議会議員選挙における当選無効と議員報酬・政務活動費の取扱い
また議員報酬については、議員の選挙における当選人がその選挙に関し公選法251条所定の罪を犯して刑に処せられた場合には、当該当選人は、自ら民主主義の根幹を成す公職選挙の公明、適正を著しく害したものというべきであり、同条は、このような点に鑑み、当選の効力を遡って失わせることとしているものと解され、遡って市会議員の職を失った当選人が市会議員として活動を行っていたとしても、それは上告人(B地方公共団体)との関係で価値を有しないものと評価せざるを得ないとし、支給された議員報酬全額をB地方公共団体に対し返還すべきものであるとした。
【最三小判令和5年12月12日裁判所ウェブサイト(抜粋)】
議員の選挙における当選人がその選挙に関し公職選挙法251条所定の罪を犯して刑に処せられた場合には、当該当選人は、自ら民主主義の根幹を成す公職選挙の公明、適正を著しく害したものというべきであり、同条は、このような点に鑑み、上記の場合における当選の効力を遡って失わせることとしているものと解される。このことからすれば、同条の規定により遡って市会議員の職を失った当選人が市会議員として活動を行っていたとしても、それは上告人〔B地方公共団体〕との関係で価値を有しないものと評価せざるを得ない。
そうすると、上記当選人は、上告人〔B地方公共団体〕に対し、市会議員として行った活動に関し、不当利得返還請求権を有することはないというべきである。
したがって、被上告人〔A議員〕は、上告人〔B地方公共団体〕に対し、上記1の相殺の抗弁に係る不当利得返還請求権を有するものということはできない。
以上より、公選法251条に違反したことにより当選無効となった議員については、判決が確定されるまでに支給された政務活動費及び議員報酬については、全額所属する地方公共団体に返還する義務があるといえる。