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2024.03.25 コンプライアンス

第92回 地方議会議員選挙における当選無効と議員報酬・政務活動費の取扱い

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当選無効議員の失職時期と議決の効力(行政実例昭和39年7月10日)
問 昭和38年4月選出のA市議会議員Bが、公職選挙法違反のため当選直後刑事訴訟により、裁判の結果、有罪の判決をうけたが、更に被告人控訴の申立をしたところ、控訴棄却の判決があり、次のとおり確定した。  
 罪名 公職選挙法違反 同法221条1項1号、129条、239条1号、252条4項  
 刑名 罰金1万円 公民権停止3年  
 確定の日 昭和39年3月18日
1 上記の場合A市議会議員Bは、公職選挙法(以下「公職法」という。)第251条の規定により当選無効となるが、A市議会議員Bの失職の時期は、地方自治法(以下「自治法」という。)第128条に該当しないから、当選の日に遡及して失職するものと解するがどうか。
2 当選の日から失職するものと解した場合においても判決確定日前の議会の議決の効力については、有効と解するがどうか。
答1 お見込のとおり。  
 2 お見込のとおり。

 以上から、議員が議員報酬及び期末手当の各支払請求権を有するのは、法律上、議員の身分を有することの効果にほかならないのであるから、公選法251条により当選が無効とされ、はじめから議員としての身分を取得しないものとされた議員が、議員報酬及び期末手当を取得する法律上の根拠はないといえ、議員報酬及び期末手当を地方公共団体は支給する必要がないといえる。
 しかし、東京高判平成13年11月28日判時1780号86頁及び行政実例昭和41年5月20日にあるように、公選法251条により当選が無効とされた当選人による議員活動について、当該当選人が議員活動を全く行わなかったなどの特段の事情がない限り、普通地方公共団体は、当該議員活動により当該当選人に支給された議員報酬及び期末手当と対価的に均衡する利益を受けたと見て、法律上の原因なく議員報酬及び期末手当と同額の利益を受けたものと解するのが相当であると解されてきた。

【東京高判平成13年11月28日判時1780号86頁抜粋】
 議員報酬は議員の提供する役務の対価として勤務対価性をもって支給されているものであり、また、議員報酬が議員の身分と一体性を持つことも考えれば、当選無効により失職した議員が提供した勤務と地方公共団体が支給した報酬その他の給付は、一般的には均衡しているとみるのが通常である旨主張する。
 なるほど、行政実例においても、「一般的には、その勤務と給付は均衡していると見られるのが通常であり、その場合は不当利得返還請求権も生じないことになる」(昭和41年5月20日自治行第65号鳥取県総務部長宛行政課長回答。同旨、昭和41年5月23日自治行第67号青森県総務部長宛行政課長回答)と解されているが、しかし、上記行政実例は、公職選挙法251条により当選無効とされた議員は、当選の時点に遡って議員としての地位を失うことを前提としつつ、当該議員が相応の議員活動を実際に行った場合を含めた一般論を示したものと解されるのであり、その議員が行った議員活動や勤務が普通地方公共団体に利益を与えた場合には、原則としてその勤務を受けた給付とが均衡していると見て不当利得が成立しないことを明らかにするものと位置づけるのが相当であるから、この実例を参考にするとしても、当該議員において、その活動により現実に普通地方公共団体に相応の利益を与えたことを主張立証することが必要であると考えられる。

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