2024.03.25 コンプライアンス
第92回 地方議会議員選挙における当選無効と議員報酬・政務活動費の取扱い
明治大学政治経済学部講師/株式会社廣瀬行政研究所代表取締役 廣瀬和彦
地方議会議員選挙における当選無効と議員報酬・政務活動費の取扱い
公職選挙法(以下「公選法」という)251条による選挙に関する犯罪により当選無効とされた場合、当該議員が所属するB地方公共団体はA議員に対し、すでに支給した議員報酬及び政務活動費について不当利得返還請求権を行使することは可能か。なお、A議員は公選法違反の罪の被疑事実等により拘束されていた期間を除き、相応の議員活動を実際に行っていたとされている。
公選法251条により当選無効となった場合、当選人を刑に処する有罪判決の確定時より遡って当初から当然に当選を無効とすることを規定している。すなわち、その当選無効の効力は、当選の時に遡って生ずることが定められている。
また、地方自治法128条の規定中には、公選法251条により当選人の当選が無効とされた場合については、何ら触れられておらず、地方自治法は、その場合における議員の失職の時期については、全く規定を設けていない。これは、同法が、公選法251条の規定を受けて、その場合の「当選無効」の当然の効果として、当選無効とされた議員は、当初から議員としての地位を取得することがないと解しているといえる。
【公選法251条】
当選人がその選挙に関しこの章に掲げる罪(第235条の6、第236条の2、第245条、第246条第2号から第9号まで、第248条、第249条の2第3項から第5項まで及び第7項、第249条の3、第249条の4、第249条の5第1項及び第3項、第252条の2、第252条の3並びに第253条の罪を除く。)を犯し刑に処せられたときは、その当選人の当選は、無効とする。
さらに、行政実例昭和39年7月10日においても、公選法251条により当選人の当選が無効とされた場合、当該議員は、当選の日に遡及して失職するものとしている。