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2024.03.11 仕事術

第17回 どうする予算③

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元所沢市議会議員 木田 弥

 さて、この記事を目にする頃には、3月定例会も既に中盤を迎えていることでしょう。予算審査を経て、「これは何とかして、予算の減額修正を実現しなくてはならない」という予算修正項目の見極めがつきつつある人もいるかもしれません。
 一方で、「執行部が提案してきた予算には、寸分の隙もなく、修正すべき項目など見いだすことができない」という人もいるでしょう。その場合は、自身の議員としての力量がまだ不十分なため、何が問題かよく分からない場合と、執行部側が、住民や地域が抱える切実な課題を新規事業によって解決しようという意欲があまりないために、必然的に修正余地のない予算案になっている場合、あるいはその二つが重なっている場合が考えられます。
 市区町村によっては、例えば生活保護や小中学校の運営、介護保険の運営、市道や公園の管理など、法律で定められた事業のみをこなすことに集中して、それ以外はあまり手出ししないという堅実ですがつまらない行政経営を行う市区町村もあります。
 義務的経費が予算の支出のほとんどで、自主財源の乏しい市区町村の場合、そもそも新規事業に手を出す財源も確保しにくいのが実態かと思われます。
 一方で、そうした厳しい財政状況にもかかわらず、座して死を待つわけにはいかないと、大規模投資事業に走る市区町村もあります。右肩上がりの時代ならともかく、日本全体が高齢化社会を迎える中で、乾坤一擲(けんこんいってき)の大勝負に打って出ても成功する可能性はあまり高くないようです。典型的な例として、石炭鉱山閉山後の危機を乗り切るためにスキー場や宿泊施設、「石炭の歴史村」という観光施設に積極投資して破綻した夕張市が挙げられます。都市部であれば、市街地再開発事業や工業団地造成事業などの失敗事例もあります。
 ですから、首長や執行部が、そういった危険な賭けに踏み出すために調査費などの予算を出してきたら、精査の上、これは将来に禍根を残すという確信が持てたなら、躊躇(ちゅうちょ)なく減額修正を提案することも必要です。基本的には、公的部門が大きなリスクを負って、公的資金を使って採算が危うい事業に乗り出す場合、議会による相当緻密な精査が望まれます。いったん減額修正することで、執行部側も冷静に判断する余地が生まれるというものです。

首長の思いつきとも思える新規事業の減額修正事例

 一方で、自主財源が一定程度確保できる市区町村であれば、新規事業の提案余地があります。
 減額修正の項目が見えてきたということは、それだけ首長や執行部が新規事業を当初予算に盛り込んでいるのかもしれません。行政が取り組むべき新たな課題もどんどん変化してきていますから、そうした新しい政策課題に対応するために新規事業が提案されることは、基本的に歓迎すべきことです。
 しかし、やはり新規事業は前例がないために、課題が多いことも事実です。例えば、これは予算事業ではないのですが、所沢市では、管理の行き届かない空き家の増加に対応するために、平成22年7月に全国で初めて空き家条例を制定しました。これなども新たな行政課題に対応した執行部側からの提案でしたが、特に新たな予算措置も伴っていませんでした。こういったスジのいい提案であれば、議会側も空き家問題の深刻さをよく認識していましたから、基本的には反対もなく、すんなり議会で通りました。一方で、前例が他市区町村になかっただけに、議会としてもおっかなびっくり可決したという感じでした。その後、空き家条例は全国に波及し、最終的には平成26年11月に議員立法により、「空家等対策の推進に関する特別措置法」(平成26年11月27日公布・平成27年2月26日施行・一部平成27年5月26日施行)の制定にまで至ることになります。
 現場の切実な問題意識から発したスジのいい新規事業だけではなく、首長の思いつきで生まれたと思われる新規事業もあります。
 当時の首長の独断専行で決断されたと思われるある新規事業が、所沢市議会令和3年3月定例会で、8,000万円から4,000万円に減額修正されました。
 首長は、「自然環境保全型の総合公園として、武蔵野の平地林と、そこに息づく多様な生物を育む環境を保全・創出する」ことを目的として計画された公園に、当初の計画にはなかった大型遊具であるクライミングネットを設置する費用を新規事業の予算として提案しました(1)
 新規事業の場合は、本当に切実な政策課題に対応する内容なのか、それとも単なる首長の思いつきなのかをしっかりと判断する必要があります。
 この所沢市議会の予算修正案可決に至る過程を教材に、予算修正の提案から可決までを検証しましょう。

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