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2024.02.13 議員提案条例

第2回 議員提案条例の取組みに対する全国議長の認識の調査結果

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3 条例制定プロセスの改善案の検討とそれに対する全国の議長の見解

(1)条例制定プロセスの改善案~条例制定要求制度の提案~
 茨城県議会の議員提案条例に対する批判記事も踏まえ、当ゼミでは条例制定のあり方として、議会本来の機能は執行部からの提案を県民代表の立場で審議するということにあるのではないかということに重きを置いて検討した。
 すなわち、議員が行政の根拠となる条例を提案することも権能としてはもちろんあるが、議会は執行部の行政運営を監視したり、執行部の提案を評価・議論することが本来の役割であり、条例制定の必要があれば、議員の質問等により執行部に政策提案ないし政策立案を要求し、条例を制定することを求めるようにすべきであると考えたわけである。
 その要求に基づき、執行部として一定期間内に条例提案の適否を検討し議会に返答するような制度をまずは構築すべきである。そうしないと最も大事な議会の役割を十分に果たせないことになるおそれがあると考えたわけである。
 繰り返すが、議会の本来的な役割としては、執行部が提案する政策に関して、市民の目線を基本に専門的な視点も踏まえつつ議論していくことであろう。その際には、選挙等の活動を通じて市民の代表としての感覚で、政策・施策を見極めることが求められる。
 その過程において、議員提案することもあり得るであろう。しかしながら、自ら立案する立場に回ると、それを俎上(そじょう)に載せて厳しい視点から吟味するのは本質的に難しくなり、それに対する審議も遠慮がちになるであろうし、何よりも行政執行を念頭に置いた提案を見極め、それに対する一歩離れたスタンスからの審議が何よりも大事ではないかと思うのである。それがある意味、本連載の重要な論点である毎日新聞の茨城県議会審議批判、すなわち議員提案条例審議が低調になることへの対応になるのではないかと考えた。
 これに対して、議員提案条例に積極的に取り組む議会においては、執行部提案と区別なく議論しているという主張がなされることも多いであろう。
 ただ、議会が本当にその政策を必要とするならば、執行部に考えさせるという方式を提案したい。これらは、図11で図解している。
 つまり、①議員が住民ニーズを把握して対応すべきと強く考えたのならば、議会内部でその方向性(あるいは一部の会派だけでもまとまれば議会の意思として)を打ち出す、②執行部はそれを受けて必要かどうかを議会への答弁という形でもよいが、一定程度時間をかけ、その実現可能性も含めて施策を検討する、③執行部が検討した結果「条例化は難しい」となれば、その旨議会に対して回答し、それをもとに議会はその妥当性を審議することになる、④実現可能性が認められた場合には執行部は施策を条例という形で提案して、それを議会が審議する、という流れである。
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図11 条例制定プロセスと議会関与の改善案~条例制定要求制度~

 いわば、「(議会の執行部への)条例制定要求制度」というべき提案なのであるが、住民ニーズを把握した会派のみならず、議会全体としてその方向性が議論できることになるし、何よりも、執行部が予算編成権や規則制定権をもって条例のありようを提案できる点が極めて有意義な点といえる。
 このようなことになれば、条例だけが上滑り・空回りせずに、十分な議論が期待されるし、そもそも二元代表制は本来そのような政策立案が想定されていたとも思われる。

(2)改善案に対する議長の意見(図12)
 このような私たちの考えに対して、全国の議長はどう考えたか、であるが、図12に示すとおり、おおむね支持し難いという結果となった。
 都道府県においては、支持しないが70%超であり、県庁所在市もそれに準じた結果となった。県内市町村は、やや支持するという意見が3割超となったが、半数以上は支持しないということである。
 Giinteianjyourei_zu12
 この設問については、「その他」として支持・不支持の判断を避けつつも、様々な思いを示した議長が数多く存在し、また無回答も多かった。この問題に対する複雑な心情が垣間見えるようである。
 次回は、これらの考察結果を踏まえて、議員提案条例をはじめ二元代表制のあり方をテーマにしたシンポジウムを開催することにこぎ着けたので、その結果を紹介することとしたい。

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