2024.01.25 広報広聴
第19回 改選後のタイミングにおける議会改革の進め方 ~山形県酒田市議会の「政策サイクル」の取組み~
政策提言の仕上げに向けて
2023年1月、再び酒田市議会を訪れた。前回からの8か月の間、各常任委員会では、政策提言のテーマを確定し、「委員会活動計画」に基づいて、9月の提言に向けて関連団体との意見交換会、視察の実施、それを踏まえた議員間討議を重ねていた。また、常任委員会の活動が活性化したこともあり、この間に策定された酒田市総合計画後期計画に対して、初めて各常任委員会単位で議員間討議を行い、執行部担当と意見交換、計画(素案)に対する委員会単位での意見書の提出を実施した。今回の研修では、政策提言のまとめ方をイメージしてもらうために、奥州市議会、岩手県久慈市議会、滝沢市議会、東京都東村山市議会総務企画常任委員会等の提言書を紹介しながら進めた。
続いて5月に訪問した際の研修では、政策提言の仕上げに向けて、各常任委員会の進捗状況を全体で共有した。①計画した調査活動の実施、②正副委員長の原案作成、③原案を踏まえた議員間討議、④提言項目の抽出、⑤担当部局との最終調整、⑥素案作成、のプロセスのどこまで完了しているかを確認し、6月定例会中に各常任委員会の素案を完成させ、9月定例会中に政策提言を行うことが再確認された。
また、話し合いの「言える化」ツールである「SOUNDカードTM」を使って、「政策提言の進捗状況」について対話、議員間討議を行った。「SOUNDカードTM」は、オーセンティックワークスの中土井僚さんが、イノベーションや発達心理学等の理論を背景に、2022年に開発した話し合いの活性化を図るための補助ツールである(連載第18回「『対話する議会・議員』が地方議会の未来を開く」)。議会事務局の各常任委員会の担当書記も入り、「SOUNDカードTM」で思いを確認し合った後、常任委員会ごとに提言までのアクションプランを整理した。
「SOUNDカードTM」を使った議員間討議
「政策サイクル」は「終わりなき旅」
2023年10月、総務常任委員会は、「山居倉庫の利活用と周辺整備による関係人口拡大」、「公共交通網再編による成果と課題」についての提言、民生常任委員会は、「空き家対策」、「切れ目のない子育て支援」についての提言、建設経済常任委員会は、「港湾の振興・エネルギーの振興」、「農林水産業の振興 農福連携・耕畜連携」についての提言をまとめ上げた。また、議会改革推進特別委員会では、迅速かつ機能的な議会運営を行うために、2024年4月から「通年議会」を試験導入することも決まった。
市長に政策提言
提言を終えた10月、今回の「政策サイクル」の取組みの振り返りのため、酒田市議会にお邪魔した。今回も「SOUNDカードTM」を活用して、「酒田市議会の政策サイクルの今後の方向性」について対話、議員間討議を行った。政策提言後のフォローの仕方、政策提言の内容の質の向上等、次のサイクルに向けての課題がたくさん挙がった。
早稲田大学マニフェスト研究所の「議会改革度ランキング2020」で、800位台から始まった酒田市議会の議会改革は、その後、227位、189位と着実にランクアップしてきた。しかし、「政策サイクル」の取組みは、まだ1サイクル目が終わっただけである。住民福祉の向上の実現に向けた、酒田市議会の「政策サイクル」の「終わりなき旅」は続く。