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2024.01.25 広報広聴

第19回 改選後のタイミングにおける議会改革の進め方 ~山形県酒田市議会の「政策サイクル」の取組み~

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「議会基本条例の評価・検証のワールドカフェ」で問題意識を共有

 2022年1月、筆者は酒田市議会で初めて研修を行った。当時の酒田市議会は、早稲田大学マニフェスト研究所の「議会改革度調査2020」(調査対象期間:2020年1月~12月)で調査に応じた1,404議会中800位台と、お世辞にも議会改革が進んでいる議会とはいえない状況だった。基本条例が制定されて10年がたっていたが、基本条例は制定したものの、条例どおりの議会になれていない、「改革したふり議会」であった。
 議長が、所信表明で、基本条例の原点に立ち返ると話したこともあり、研修では、「議会基本条例の評価・検証のワールドカフェ」を実施することとした(連載第12回「『対話』により『議会基本条例』の評価・検証を行うことで条例の原点に立ち戻る」)。
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議会基本条例の評価・検証のワールドカフェ

 「議会基本条例の評価・検証のワールドカフェ」は、筆者が開発したワークショップの手法で、基本条例の中からピックアップした六つの条文について、5段階(5:全くそのとおりできている、4:ややそのとおりできている、3:どちらともいえない、2:ややそのとおりできていない、1全くそのとおりできていない)でまず自己評価を行ってもらう。その後、ワールドカフェの手法で席替えをしながら、それぞれの自己評価の意味付けを共有、なぜその評価にしたのか、その理由は何かを聴き合ってもらう。同じ条文に対して、5を付ける議員、1を付ける議員が出てきたりするが、対話をすることによって、やはりできていないのか、やっているけれどそもそもの目的が達成されていないのでは、と議員それぞれの認知が揺らぎ始める。このワークショップでは、評価について合意形成をつくるのではなく、あくまでもお互いの意味付けを確認し、内省することで、議会の現状についての解像度を上げ、議員間の共通認識をつくっていくことを目指している。
 酒田市議会でのワールドカフェの最後に行われた個人の振り返りでは、市民対話の充実、政策立案、政策提案の実施、議員間討議の充実、常任委員会の強化等の意見が挙げられ、議会改革の必要性が、議員全員で確認される場になった。

常任委員会単位で「政策サイクル」を回す

 2022年5月、酒田市議会を再度訪問した。この間、議会改革推進特別委員会では、総務、民生、建設経済の3常任委員会単位で、2年の委員任期中に政策提言を行うことが、確認されていた。
 市民との対話を起点に、議員同士の対話である議員間討議を積み重ね、政策提言にまとめ上げることで、住民福祉の実現を目指すプロセスを、筆者は「政策サイクル」と呼んでいる。「政策サイクル」には、常任委員会単位での所管事務調査をベースにして、政策提言書、要望書等を提出するパターンと、予算、決算の審査、審議に際して議論を深め、必要があれば附帯決議、要望的意見を付与するパターンと、大きく2種類ある。研修では、前者の事例として、岩手県奥州市議会の取組みについて詳しく紹介した(連載第14回「『議長マニフェスト』を起点に戦略的な『議会経営』を」)。奥州市議会の「政策サイクル」のポイントの一つは、各常任委員会で「委員会活動計画」を作成して所管事務調査のテーマを明確にし、それに基づいて現地調査や視察の日程等を決め、戦略的な委員会運営を行っていることである。筆者のヒアリングベースであるが、「委員会活動計画」を作成している議会は非常に少ない印象だ。つまり、戦略的ではない、受け身の委員会活動を行う議会が圧倒的に多い。酒田市議会では、今回初めて「委員会活動計画」を作成し、定期的にブラッシュアップしてきた。
 また、今回の研修では、市民との意見交換会のバージョンアップを目指し、市役所の若手職員とのワールドカフェにも挑戦し、「酒田市の20年後の未来」をテーマに対話を行った。
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若手職員とのワールドカフェ

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