2024.01.25 広報広聴
第19回 改選後のタイミングにおける議会改革の進め方 ~山形県酒田市議会の「政策サイクル」の取組み~
青森大学社会学部教授/早稲田大学マニフェスト研究所招聘研究員 佐藤 淳
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【SHORT STORY】
1月4日の新年、ここち市で開催された賀詞交歓会に出席した後、安田議長は議長室に戻ってきた。議長の表情はあまり明るくなかったため、議会事務局の大ベテラン、山田次長が心配して声をかけた。「議長、どうかされましたか? 今年もお酒が出なかったから機嫌が悪いんですか?」。
安田議長は首を振り、「いいや、それは違うよ。交歓会で会った人たちは、皆、お隣のたさか市議会のことばかり話してきてね。商工会議所の会頭には、ここち市議会が冬眠しているかのように言われてしまったよ」。
「たさか市議会は最近、新聞でやけに取り上げられていますよね。それも良い話で。昔は、議会のいざこざ等、うちと同じで悪いニュースばかりでしたが、何だか今は違いますね」と山田次長。
この会話を聞いていた田島裕子事務局長が加わり、「たさか市議会の齋藤事務局長さんによれば、この2年間で常任委員会の活動が活発になり、政策提言を行うようになったそうです。議会がチームになって、対決ではなく対話を重視するようになったみたいですよ」と説明。
山田次長は皮肉を込めて、「へぇ、うちの議会はまだまだ対決モード真っ最中!!」。
それを聞いた安田議長は、深いため息をつきながらソファに身を沈めた。
議員研修会の投げ込み
議長の所信表明が改革のきっかけに
山形県酒田市議会では、2023年10月、公共交通や子育て支援、港湾振興等に関する、常任委員会ごとにまとめた政策提言の決議6議案を可決し、矢口明子市長に提言書を手渡した。議会改革の一環として、先進地視察や議員間討議を行い、常任委員会単位での初めての政策提言だ。
この取組みのきっかけとなったのが、2021年10月の改選で就任した、高橋千代夫議長(当時)の就任時の所信表明である。所信表明では、2010年に制定された「議会基本条例」(以下「基本条例」という)に触れて、議員間討議を行うとともに、市民の多様な意見を的確に把握しながら政策提言を行うことが書かれていることを確認。今一度、基本条例の原点に立ち返り、市民に身近で信頼される議会になること、が述べられた。
その後、基本条例に基づき、議会改革推進特別委員会が設置され、佐藤猛委員長(当時、現議長)の下で、議長の思いを受けて、議会改革と議会活性化について議論することとなった。
今回は、議会改革推進アドバイザーとして2年間伴走してきた、酒田市議会の改革の取組みを、筆者の関わりを中心に紹介していく。