2024.01.12 仕事術
第14回 どうする定数③
本則では定数増、附則で定数減という条例案を思いつく
7月に第2回の審議会を終え、10月の審議会に向けて、どのようにこの審議会をうまい形で収束させるべきかを思い悩む日が続きました。9月の議会審議で、ある市税の議案を眺めていたところ、本則では税率引き上げをするが、附則で、当面の間引き上げないとなっていました。「ああ、このやり方は使えるかもしれない」と思いつきました。
廣瀬会長との審議会打ち合わせ後のランチで、この話を持ちかけてみました。「本則は定数増で、附則は当面削減でどうでしょうか」。廣瀬会長には、第2回審議会でのC委員の強硬な主張もあり、この方向性に沿った形で答申案の作成を検討していただくことになりました。
そうして、10月には第3回となる最後の審議会を迎えます。
会長からは、答申案の説明がまずなされました。
そして、答申案の説明の最終部分で、「Ⅶ 所沢市議会のあるべき定数についてからが、この審議会としての結論を述べるところであります」、「ベスト37人、現状の政治情勢の中で33人という選択肢あり、ただし、33人は最低限確保していただきたい。こういう答申としてはいかがかという素案であります。前回の審議会の終盤では、やはり9人の常任委員会と議会活動に基点を置いて、減らすのではない形でベストな議会活動を追求していただきたいという議論と、やはり市民感情として減らさないということについては納得がいかないのではないかという議論がありました。これらの2つの議論を1つの数字になんとかまとめるというよりも、議会活動という観点でのベストと財政状況や市民感情という点に配慮した上での当面の政治判断の中での数字と2本立ての答申ということではいかがかということで、こういう素案をつくりました」との説明がありました。
D委員は、「望ましい議員定数は〔委員会当たり〕8人構成ではないか」と表明。
C委員は、「文化、社会教育、スポーツ団体すべての補助金がものすごく削減されています。ほとんどもらってないと同じです。議員1人当たりの報酬も調べたところ相当の金額で、年間1,000万円ぐらいで4年間では4,000万円です。1人の議員に対する費用4,000万円が、私が考えている32人でいくと4年間で1億6,000万円というお金の削減になり、他に、市民に活用できると思います。議員が1,000万円でどれだけの活動をしているか、それが私にはわからない。議員もいろいろな場において一生懸命活動している方と全然出てこない方との差が非常に大きいと思います。もっと議員が地域に入り込んで、活動している姿が我々の目に留まれば現状でもいいのかという考えもありますが、現状では私はどうしても削減で32人」、「10年間社会教育委員をやりましたが、その時に補助金を年間減らされてばかりでたいへんでした。そういうことを議員の方が果たしてわかっているのかどうか。今体育協会をやっておりますが、体育協会は23団体11支部があっても、補助金が300万円いかない状況です。そういう苦しい中において議員定数がこれだけ多いということは、私自身はもっと減らしてほしい。先生方は法律の知識などがいろいろあるけれども、我々は一般市民としての意見を受けていますので、それをなんとか考えてほしいと思います」と主張されました。A委員からは、こうしたC委員の発言に対して、審議会のあり方も含めて説明をいただきましたが、議員の数を削減して、その余ったお金を自分たちに回してほしいという主張が変わることはありませんでした。
さらに、A委員からは、「1回下げたら上がらないですよ。また下げろという議論ですよ。それは自治の問題として問題ですよ。政治的な幅で33という議論もあり得ると思っていますけれども、そういう議論を展開したら、自治の問題が財政問題になってしまうんですよ。行政改革の論理になってしまう。私が参加している審議会でそういう論理というのは、わからないです。正直いって。だから、原則で出すなら出したほうがいいのではないですか。1回下げたら上がらないですよ。また下げろですよ」との意見もいただきました。
最後に会長から「住民自治の原理から考えて、ベストの数字としては37という数字が出てくるけれども、他方で情勢判断の数字として議会の権能を致命的には損なわない範囲でということならば、33という数字もあり得るという数字として、それぞれの位置付けを明確に説明をした上で、原則37、情勢判断33ということを受け止めて市民意見を十分に聴取をした上で、最終的に議会として判断をしていただきたい。その時には議員としての考え方を明示した上で、説明責任が果たせる形で判断をしていただきたいということで答申案を最終的に確定したいと思います」との発言があり、全委員の了承を経て、審議会の答申案が確定しました。平成24年11月29日には答申案が会長から当時の議長に手渡されました。
この答申案の概要は以下のとおりです。
(1)議会活動の充実のために求められる議員定数
現行の9人の委員で構成する4常任委員会体制を維持していくことが望ましい。また、議長は、実質的に委員会審査に参加しないことが慣例であることから、あるべき議員定数を37人とする。
(2)当面の情勢下における議員定数についての判断
市政全体の行財政改革に対する議会としての強い政治姿勢を示すことも期待されているが、その一方で、議会としての最低限確保すべき活動の充実は犠牲にすべきではない。
こうした観点から、当面の情勢下の政治的な判断として定数減を行う場合には、1委員会8人、議長を加えた33人を下限とすることが望ましい。
この提言を受けて下記の条例案を策定しました。
○所沢市議会議員定数条例(案)
地方自治法(昭和22年法律第67号)第91条第1項の規定により、所沢市議会の議員の定数は、37人とする。
附 則
(施行期日)
1 この条例は、平成15年1月1日から施行する。
(所沢市議会の議員の定数を減少する条例の廃止)
2 所沢市議会の議員の定数を減少する条例(昭和57年条例第39号)は、廃止する。
(経過措置)
3 所沢市議会の議員の定数は、平成15年1月1日以後初めてその期日を告示される一般選挙までの間は、なお従前の例による。
附 則(平成25年3月28日条例第8号)
(施行期日)
1 この条例は、公布の日から施行し、本則の規定は、この条例の施行の日以後初めてその期日を告示される一般選挙から適用する。
(経過措置)
2 当分の間、所沢市議会の議員の定数は、本則の規定にかかわらず、33人とする。
この案に基づき、平成25年に意見提案手続(パブリックコメント)及び公聴会を実施し、様々な意見をいただきましたが、基本的には答申案に沿った形の原案に修正を加えることなく、平成25年第1回定例会で改正がなされました。