2024.01.12
第7回 従業員を自由に解雇できるか
弁護士 中川洋子
従業員を自由に解雇できるか。
従業員を解雇するには法律上の厳しい制約があり、一定の要件を満たさない限り、当該解雇は違法・無効と評価される可能性がある。
1 解雇とは
解雇とは、使用者の一方的な意思表示による労働契約の解約である。
主に、普通解雇、懲戒解雇、整理解雇の3種類に分類される。
普通解雇とは、労働者の能力不足や健康上の理由など、使用者が労働契約の継続が困難と判断した場合に解雇することである。
懲戒解雇とは、企業秩序違反に対する制裁罰として科す懲戒処分としての解雇である(懲戒処分としては最も重い)。
整理解雇とは、使用者側の経営上の都合で行う解雇のことである。
民法は、「当事者が雇用の期間を定めなかったときは、各当事者は、いつでも解約の申入れをすることができる。この場合において、雇用は、解約の申入れの日から2週間を経過することによって終了する」としており(627条1項)、本来解雇は自由とされているが、労働者保護の要請から、実際には様々な制約が課されている。
2 法律による制限
(1)労働基準法(以下「労基法」という)20条
使用者が労働者を解雇するには、原則として、①少なくとも30日前に労働者に予告する(予告期間)、②30日分以上の平均賃金を支払う(予告手当)、③予告期間の日数と予告手当の日数を合計して30日以上になるようにする(20日前の予告と10日分の予告手当を支払う等)のいずれかの措置をとらなければならない(ただし、労基法20条1項ただし書に除外事由あり)。
(2)労基法19条
使用者は、労働者が業務上の負傷や疾病による療養のために休業する期間及びその後30日間、並びに、産前産後休業の期間及びその後の30日間は、その労働者を解雇してはならない(ただし、労基法19条1項ただし書に除外事由あり)。
(3)その他の制限
また、上記以外にも、国籍・信条・社会的身分に基づく解雇(労基法3条)や労働組合の組合員であることや、労働組合への加入・結成をし、労働組合の正当な活動をしたことを理由とした解雇(労働組合法7条1号)の禁止等、差別的な解雇や報復的な解雇を規制するため、様々な法律において、一定の理由に基づく解雇を禁止する規定が置かれている。