2024.01.12
第6回 境界を越えた隣家の木の枝は切除できるか
弁護士 尾畠弘典
境界を越えた隣家の木の枝は切除できるか。
原則として自ら切除することはできず、木の所有者にその枝を切除させることができるにとどまる。ただし、一定の場合には自ら切除することができる。
1 民法の規定
隣り合う土地の所有者に関わる関係(「相隣関係」という)の規定は、民法において定められている。民法233条は、隣地の竹木の枝の切除及び根の切取りについて次のように定める。
(竹木の枝の切除及び根の切取り)
第233条 土地の所有者は、隣地の竹木の枝が境界線を越えるときは、その竹木の所有者に、その枝を切除させることができる。
2 前項の場合において、竹木が数人の共有に属するときは、各共有者は、その枝を切り取ることができる。
3 第1項の場合において、次に掲げるときは、土地の所有者は、その枝を切り取ることができる。
一 竹木の所有者に枝を切除するよう催告したにもかかわらず、竹木の所有者が相当の期間内に切除しないとき。
二 竹木の所有者を知ることができず、又はその所在を知ることができないとき。
三 急迫の事情があるとき。
4 隣地の竹木の根が境界線を越えるときは、その根を切り取ることができる。
2 原則
隣家の竹木の枝が境界線を越えて出ているときは、竹木の所有者に境界線を越える部分を切り取るよう請求できる(民法233条1項)。
請求を受けた竹木の所有者は、境界線を越える枝を切除する義務を負う。竹木が数人の共有に属するときは、各共有者は、単独でその枝を切り取ることができる(同条2項)。
竹木の所有者が応じないときは、裁判所に対して、竹木の所有者の費用にて第三者に切除させることを請求できる。
なお、竹木の枝の切除の請求はいかなる場合にも可能というわけではなく、例えば枝の越境によって日常生活に支障がある等の場合にのみ可能であると解される。枝の越境によって何らの害を受けていない場合に切除の請求を行うことは、権利の濫用(民法1条3項)に当たり認められないと解される。