2023.12.11
第5回 どのようなとき少額訴訟を利用できるか
弁護士 瀬戸康宏
どのようなとき少額訴訟を利用できるか。
少額訴訟とは、少額の金銭支払をめぐる紛争を迅速に解決するため、1回の裁判期日での紛争解決を目指す手続である。
少額訴訟の特徴は、①審理は原則1回、口頭弁論終結後その日のうちに判決言渡しとなるのが通常であること、②証拠書類や証人は、即時に調べられるものに限定されること、③一括払いだけではなく、支払猶予や分割払いの判決もできることである。全国の簡易裁判所で少額訴訟の手続を利用することができる。
1 少額訴訟とは何か
少額訴訟とは、身近に起きた軽微な事件を一般市民自らの手によって短期間かつ簡単な手続で解決する訴訟手続である。
利用するためには、①裁判の対象が60万円以下の金銭の請求であること、②被告が少額訴訟手続に異議がないこと、③利用回数制限(同一の年に10回まで)を超えないことが条件とされる。
少額訴訟手続として行う請求としては、具体的には、貸金返還請求、売買代金請求、給料支払請求、敷金返還請求、請負代金請求、賃料支払請求などが考えられる。
2 少額訴訟の手続
少額訴訟の手続を利用するには、少額訴訟手続で審理を求めることを記載した訴状を簡易裁判所に提出し、訴訟を提起する。一般的には、裁判所の窓口に事件類型別に作成された定型訴状用紙が備え置かれているため、定型訴状用紙を利用してもよい。なお、定型の用紙やその記載例については、裁判所のウェブページでもダウンロードできるので参考にしてほしい。
少額訴訟の手続は、訴える人が少額訴訟手続で審理を求めなければ、利用することができない。したがって、訴えた人が通常の訴訟手続を選択した事件については、訴えられた人は、たとえ少額訴訟の手続での審理を希望した場合であっても、少額訴訟の手続を利用することができない。
他方で、少額訴訟の手続を選択して訴えたとしても、必ずしも少額訴訟の手続を使えるとは限らないことには注意が必要である。訴えられた人から通常の手続での審理を求める申出があった場合には、通常の訴訟手続に移行する。また、事件が複雑である、訴えられた人と連絡がとれない、利用回数が10回を超えるなど一定の場合には、裁判所が決定により通常の訴訟手続に移行することがある。
3 少額訴訟のために用意するもの
少額訴訟では、最初の期日に、訴えた人と訴えられた人の両方からすべての言い分と証拠を出してもらって審理し、即日、判決が言い渡されることが原則となっている。そのため、最初の期日までに言いたいことがあればすべての言い分を裁判所に説明できるように準備する必要があるし、調べてほしい証拠があれば、すべての証拠を提出できるように準備しておく必要がある。また、証人として言い分を証明してくれると考えられる人がいれば、最初の期日に裁判所に来てもらう必要がある。