2023.12.11 仕事術
第12回 どうする定数①
そもそも地方議会の定数は自治法で定められていた
平成23年の地方自治法の一部を改正する法律(平成23年法律35号)の施行以前は、地方議会の議員定数は、自治法でその人口に応じた一定の基準(法定数、平成15年からは、法定上限数)が定められていました。
そのため、それまでは、法定数若しくは法定上限数という基準から何人減らしたという議論で事が足りていました。つまり、議員及び議会は、自分たちの定数の根拠を自ら説明する必要はありませんでした。ところが、法改正以降は、本来であればゼロベースで定数を検討する必要が出てきました。
定数のあり方について、少し頭の体操をしてみましょう。
日本国憲法93条は「地方公共団体には、法律の定めるところにより、その議事機関として議会を設置する」となっていますので、定数0人は憲法違反になります。もっとも、町村については、自治法94条で「議会を置かず、選挙権を有する者の総会を設けることができる」となっていますので、定数0人も理論的にはあり得ます。市議会以上については、よって1人以上、といいたいところですが、自治法103条で「議員の中から議長及び副議長一人を選挙しなければならない」とされていますので、最低2人必要です。さすがに議長、副議長だけの議会というのはあり得ないですし、もし2人の場合は、賛否は常に副議長が決定することになってしまいます。ですから、賛否を問う以上は、議長以外に2人必要です。これで、定数は3人。ところが、定数が3人で議長が評決に加わらないとなると、議長以外の2人で賛否を決定することになります。賛否が分かれた場合は、常に議長判断となりますので、議長以外に3人いれば議長判断を極力避けることができるので、定数はできれば4人は欲しいところです。
上限は、極端にいってしまえば、有権者全員。町村総会は、別の見方をすれば、定数が町村の有権者全員の議会とみなすこともできそうです。
さて、ここで視点を変えて、海外の地方議会の事例も少し確認しておきましょう。私は、「海外がこれだけ少ない議員でやっているのだから日本も減らせばよい」という議論には、基本的には与(くみ)しません。なぜなら、そもそも地方議会と執行部の関係性が違っている場合が多いからです。私が直接話を伺った市では、議員が執行部の部長に就任していたり(オランダのティルブルグ市)、市長が議員を兼ねていたりする(米国コロラド州ゴールデン市)など、日本と比較するには制度が違い過ぎるからです。
一方で、どれくらいの議員がいれば住民の意見を反映することができるかという観点からは、海外の議員定数は参考になります。
例えば、先ほどのゴールデン市の場合、定数は7人で、うち1人が市長。ゴールデン市の人口は、約1万8,000人。また、日本人でも人気のオレゴン州ポートランド市は、市長と4人の市政委員、1人の監査役で議会が構成されています。いずれも選挙で選出されます。市長が議会の一員であることは、ゴールデン市と同様です。人口は約65万人。
人口の割に議員の数は少ないですが、市内各地域の住民意見を反映する仕組みは別途用意されているようです。
こういった海外の定数の状況を見ると、人口規模とは別に、賛否を決定するためには、やはり4人から5人程度の議員数が必要最低ラインかと思います。
いずれにせよ、定数を決定するというのは、相当深い思慮と調査に基づかないといけないということは理解していただきたいと思います。