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2023.11.27 政務活動費

第8回 大学院の学費/収支報告書提出後の訂正の是非/携帯電話代

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携帯電話代

 議員が政務活動を行う上で、住民や他の議員等との連絡手段や情報収集手段として携帯電話を使用することはあり得る。しかし、当該携帯電話代を100%政務活動費より支出するに当たっては、政務活動以外に使用していないという立証が必要であるが、現実的に困難を極める。
 名古屋高判令和4年7月27日及び広島高岡山支判平成29年3月30日並びに仙台高判平成28年6月22日においては、携帯電話が政務活動に使用されることを認めた上で、議員の活動は、政務活動のほかにも、政党活動や後援会活動など多岐にわたるものであることから、政務活動とその他の活動に使用されたものとみなし、50%の支出を認めているといえる。なお、この場合、個人としての携帯電話を持っている上で、別途、政務活動用の携帯電話を有している中でその50%を政務活動費から支出することが適当であるといえる。

【名古屋高判令和4年7月27日(原審・金沢地判令和4年2月18日)】
 携帯電話及びタブレット端末は政務活動に関する連絡手段や情報収集手段として、……いずれも議員の政務活動の用に供され得るものであり、これらに係る上記経費は、いずれも政務活動と一般的な関連性を有するものと認められる。そしてこれらの経費は個々の政務活動ごとに生じるものではなく、通常、一定期間の利用に対する対価又は経費という形で生ずるものであって、個々の政務活動との直接的な対応関係を明らかにすることは事実上困難であるし、仮に、これらの利用時間や利用割合等に応じた対応関係を想定できるとしても、これを逐一明らかにすることは、時宜に応じた的確な政務活動の実施に支障を来し、地方自治法及び本件条例が政務活動費の交付を定めた趣旨に反することにもなりかねない。これらの点を考慮すると、上記経費は、本件条例別表所定の「共通経費」として位置付けることがふさわしい経費であるといえる。
 また、議員の活動は、政務活動のほかにも、政党活動や後援会活動など多岐にわたるものであり、これらの活動のために上記携帯電話、タブレット端末……を使用することも想定されるところ、本件手引きは、議員がこれらの携帯電話等を使用する事務のうち、一般的に政務活動に関連性を有するものの割合及びそれに要する金額として上記の割合及び充当限度額を定めたものであり、上記の本件手引きの定めは、地方自治法及び本件条例の趣旨に照らして不合理なものであるとまでは認められない。

【広島高岡山支判平成29年3月30日(原審・岡山地判平成28年4月27日)】
 議員が自宅で使用する電話、ファクシミリ及び携帯電話に係る料金については、観念的には、議会活動の基礎となる調査研究活動と合理的関連性を有する利用のほか、純然たる私的利用や議員個人としての政治活動に関する利用が想定されるものである。そして、議会活動の基礎となる調査研究活動と合理的関連性を有しない電話等の利用がどの程度であるかについては、本件における不当利得返還請求権の発生要件であり、議員ごとに異なり得るものであるから、本来、使途基準に適合しないことについての主張、立証責任を負う1審原告において、議員ごとの具体的な主張、立証が必要というべきところ、本件においては、こうした主張、立証はない。それにもかかわらず、全ての議員に共通する一律の割合として、純然たる私的利用や議員個人の政治活動に関する利用がより多いと認めることは相当ではないから、議員が自宅で使用する電話等の料金が使途基準に適合しないとされる割合は、ある程度控えめに算定することが相当であり、50%とすることが相当である。

【仙台高判平成28年6月22日(原審・仙台地判平成26年11月27日)】
 携帯電話については、既に検討したとおり、一般的、外形的事実からは、通信手段として、調査研究活動以外の活動にも利用されていることが推認されるというべきである。
 補助参加人J党は、そのほとんどが調査研究活動に利用されているところを会派内規により8割の按分にしていると主張するが、その利用の実態を裏付けるに足りる資料は認められず、また、上記推認を妨げるに足りる証拠はなく、按分割合の合理性に係る立証等があると認めることもできないから、上記料金は、その2分の1を超えて政務調査費から支出することは許されないというべきである。

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