2023.11.27 政務活動費
第8回 大学院の学費/収支報告書提出後の訂正の是非/携帯電話代
明治大学政治経済学部講師/株式会社廣瀬行政研究所代表取締役 廣瀬和彦
大学院の学費
議員が大学院に行くに当たって、政務活動費から学費を支出することが可能かどうか疑義が生じる。
広島高判平成31年1月17日では、議員が受講した大学院の地域公共政策コースは、地域の政策を企画・立案・評価できるプロの育成を目的としていることが認められ、同コースの受講と調査研究活動との関連性があるといえるから、上記支出を違法であると認めることはできないとし、政務活動費からの大学院学費の全額支出を認めている。
広島高岡山支判平成29年3月30日では、議員が政務活動費を支出して受講する大学院が、現代社会が直面する諸問題を「公共性」及び「公共財」の観点から解明し、その解決策を立案する能力を持った人材を育成することを目的とし、国や地方自治体等において、公共政策に対する感覚の豊かな専門的職業人の育成を目指すとされていることや、大学院の課程において地方議会改革のあり方や、受益と負担を考慮した税制のあり方等を研究してきたことが認められることから、大学院の受講が議員としての調査研究活動との合理的関連性に欠けるということはできないとして、政務活動費からの大学院の学費の支出を認めている。
また、東京地判平成28年3月11日では、議員が大学院に通学することは議員の調査研究活動の基盤の充実を図るという政務調査研究費の趣旨に合致するということから、政務活動費から大学院の学費を支出することを認めている。
以上からいえることは、議員が政務活動費を使用して大学院の学費を支出するに当たっては、当該大学院の講義内容や得られる知識が、議員の調査研究その他の活動に資され、地方公共団体の事務と合理的な関連性があることが必要であるといえ、地方公共団体の事務と関連性のない議員個人の大学院の学費について支出することは難しいと考える。
【広島高判平成31年1月17日】
会派所属のci議員(以下「ci議員」という。)が受講したK大学大学院社会文化科学研究科の授業料(平成24年度前期分)であり、会派がその全額を支出したことが認められる。
証拠(乙Eア10ないし12)によれば、ci議員は、上記研究科のうち地域公共政策コースを受講したところ、同コースは、地域の政策を企画・立案・評価できるプロの育成を目的としていることが認められ、同コースの受講と調査研究活動との関連性があるといえるから、上記支出を違法であると認めることはできない。
【広島高岡山支判平成29年3月30日】
会派に所属するbq議員が受講したB大学大学院社会文化科学研究科博士前期課程の授業料(平成23年度前期分)であり、会派がその全額を支払ったことが認められる。そして、上記の証拠によれば、bq議員は、同研究科の課程のうち公共政策科学専攻課程を受講したところ、同課程は、現代社会が直面する諸問題を「公共性」及び「公共財」の観点から解明し、その解決策を立案する能力を持った人材を育成することを目的とし、国や地方自治体等において、公共政策に対する感覚の豊かな専門的職業人の育成を目指すとされていることや、bq議員も、同課程において、地方議会改革の在り方や、受益と負担を考慮した税制の在り方等を研究してきたことが認められる。これらの事実に照らすと、同課程の受講が議員としての調査研究活動との合理的関連性に欠けるということはできないから、上記の支出が使途基準に適合しないということはできない。この点に関する1審原告の主張は採用することができない。
【東京地判平成28年3月11日】
拓殖大学大学院地方政治行政研究科、明治大学専門職大学院ガバナンス研究科において大学院生として研究するために必要な費用などであることが報告されていることが認められる。……また、議員が大学院に通学することは議員の調査研究活動の基盤の充実を図るという政務調査研究費の趣旨に合致するものであるといえ、議員就任前から大学院に在籍していたとしても、議員就任後の期間に対応する学費についてはそのことが直ちに否定されるとはいえず(なお、自民一覧表のA6に係る支出番号三八に対応する支出の一部返金額は、議員就任前の期間に対応する金額であると推認される。)、政務調査活動との合理的関連性を明らかに欠くとまではいえない。