2023.10.25 医療・福祉
第2回 制度改正論議にみる自立支援と科学的介護の矛盾
余談ながら
ちなみに、この科学的介護関連の加算について、筆者は制度改正当初、他の媒体(本間2021:154)で、この加算は、特別養護老人ホームよりも介護老人保健施設に有利である旨を書きました。果たして、以下が現在の算定状況を示す資料です。
出典:厚生労働省社会保障審議会介護給付費分科会介護報酬改定検証・研究委員会第27回資料1-4(令和5年9月21日)(https://www.mhlw.go.jp/content/12300000/001148276.pdf)
図4 LIFE関連加算を算定している事業所の割合(施設サービス)
筆者の予想したとおり、介護老人保健施設(以下「老健」といいます)の算定率が圧倒的に高く、特別養護老人ホーム(介護老人福祉施設)に大きく水をあけています。これは、本稿を最初から読んでいただければお分かりかと思いますが、医師が常勤で配置され、看護師などの医療職も多く配置されている老健などが算定しやすい加算であることは明白だからです。しかし、介護保険はLong-Term Care Insurance Systemと訳されるように、長期介護に照準を合わせた制度です。要介護の老人が短期間で状態改善するようなことはめったにありません。つまり、科学的介護関連の加算とは、もともと親和性が低いのです。それゆえ、特別養護老人ホームなどにおいては、がむしゃらに算定しようとするのではなく、たまたま算定条件に見合えば算定する、といった程度の取組みが現時点では、適切であろうと考えます。
■参考文献
◇厚生労働省(2023)社会保障審議会介護給付費分科会第224回資料4(令和5年9月15日)(https://www.mhlw.go.jp/content/12300000/001146439.pdf)
◇本間清文(2021)『令和3年度改定がひと目でわかる!事業者のための介護保険制度対応ナビ─運営基準・介護報酬改定速報』第一法規