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2023.10.25 広報広聴

第18回 「対話する議会・議員」が地方議会の未来を開く~「SOUNDカード(TM)」を活用した「議員間の対話」の可能性~

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「VUCA」時代の地方議会のあり方

 現在は「VUCA」時代といわれている。この言葉は、「Volatility(変動性)」、「Uncertainty(不確実性)」、「Complexity(複雑性)」、「Ambiguity(曖昧性)」の頭文字をとっており、将来の予測が困難な社会状況を表している。急激な人口減少、全国で頻繁に発生する自然災害、新型コロナウイルス感染症のパンデミック、ロシアのウクライナ侵攻等、「想定外」、「記録的」、「甚大な影響」という言葉と付き合っていかなければならない時代。問題の因果関係が分からず、コントロールも不能、誰にも正解は分からない、そんな「厄介な問題」が頻発する極めて難しい時代を我々は生きている。
 地方議会でも、誤った意思決定は住民の生活に大きな影響をもたらす。もちろん、何もしないという選択肢はない。議員は自分の今の考えや意見にこだわっていられず、議会としても、古い価値観や慣習、知識を入れ替えなければならない。
 筆者は、議会の新しいあり方として、「対話する議会・議員」を提案している。これは「住民との対話」と「議員間の対話」を通じて、住民福祉の向上を目指す議会である。具体的には、住民との意見交換会で「住民との対話」を行い、政策のアイデアを収集する。それらのアイデアを議員間の討議、「議員同士の対話」を通じて政策に仕上げ、事業や予算に反映させる。そんな議会からの「政策サイクル」を意識した議会である。

「議員間討議」は「討論」から「共創」へ

 「対話」という言葉は人それぞれに異なるイメージを喚起する。一部の人々にとっては楽しい雑談、他の人々にとってはサシでの意見交換、ワークショップや、国際紛争解決のための話し合いを想像させるかもしれない。
 哲学の社会構成主義では、対話は「特定のテーマについて、意味付けを確認し、新たな関係をつくり出すプロセス」と定義されている。ここで重要なのは「意味付け」の部分である。我々は日々、様々な事象に意味を付けている。同じ事象でも、異なる意味付けがなされるため、人々の見解や感じ方が異なり、これが人間関係における誤解や問題を引き起こす。相互理解を促進するためには、意味付けを確認し合う、対話のプロセスが不可欠である。
 議会においては、状況やその背景を自分の憶測で決めつけ、過去の枠組みや経験に基づいて自らの立場を主張することがよく見られる。ここで行われているのは「討論」であり、対話ではない。そこには、地域の課題解決に必要な情報は自分が全て知っていて、自分の意見は絶対正しいという思い込みがある。
 一方で、対話は相手の意味付けを確認し、違いやズレを理解し、意見の多様性を受け入れ、新しい知見を得るプロセスである。自分の意見が誤っている可能性、又は相手も合理的な背景を持っている可能性を認める「謙虚」な姿勢で接することが求められる。VUCA(変動性、不確実性、複雑性、曖昧性)の時代において、既存の知識だけで問題を解決することは困難であり、正解は明確でないことが多い。正解を追求するのではなく、対話を通じてともに解決策を模索し、「まずはやってみる」ことを重視し、このプロセスを繰り返していくことが重要である。勝敗を競うのではなく、問題解決に焦点を合わせるべきである。

「SOUNDカードTM」は、場の活性化を促す「言える化」ツール

 「対話」は難しいものである。人はよく「自分自身」と「自分の意見」を同一視してしまう。そのため、意見の相違を感じると、本能的に自分が攻撃されているように感じ、無意識に生存の恐怖と連想されることがある。その結果、人は自分の意見を守ろうとし、異なる意見には反対する傾向がある。
 また、意見が出にくく、相手や周囲の反応に配慮して無難な発言や態度をとることがしばしば見受けられる。「心理的安全性」というキーワードが近年、経営学の分野で注目されている。議会でも、率直な意見や素朴な質問、違和感の指摘を、誰もが気兼ねなく表現できる状況はまれだと思う。
 最近、筆者はこうした対話の難しさを解決するために、「SOUNDカードTM」(https://www.soundmethod.jp/)というツールを使用している。
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「SOUNDカードTM

 「SOUNDカードTM」は、オーセンティックワークスの中土井僚さんが、イノベーションや発達心理学等の理論を背景に、2022年に開発した話し合いの活性化を図るための補助ツールである。
 S、O、U、N、D、5種類のカードからなる。Sは「Status」で現状認識の共有、Oは「Outcome」でビジョン、ありたい姿の策定、Uは「Understand」で課題の深掘り、Nは「Negative Check」で懸念事項の確認、Dは「Drive」で具体的アクションの決定と、5段階の課題解決のステップになっている。それぞれのカードには、考えるきっかけとなる多彩な「問い」が書かれている。自分で選んだカードの「問い」について参加者全員が順番に話すことで、言い出しづらいこと、聞きたいけれど聞けないことが自然に話され、心理的安全性の高い場がつくられる。カードに書かれた「問い」の力で、場の活性化を促す、「言える化ツール」である。
 本連載第17回(「誰でも、どんなことでも遠慮せずに言える、新しい『議会と住民との意見交換会』のあり方」)では、岩手県滝沢市議会の事例を基に、住民との対話の場面での「SOUNDカードTM」の活用について紹介した。今回は、議員間の対話における「SOUNDカードTM」の活用事例を紹介する。
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滝沢市議会の議会と住民との意見交換会

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