2023.10.11 仕事術
第9回 どうする決算審査②
基本は同一年度の決算書と予算書の比較
決算の議論がそれほど活発ではない、つまり議事録が薄い、あるいは情報公開の体制が整っておらず、監査委員の決算監査の議事録の公開などとんでもないという自治体の場合、やはり基本となるのは、同一年度の決算書と予算書を見比べることです。
この作業の第一の目的は、未執行予算を見つけることです。最初の頁から最後まで見ていくと疲れてしまうので、まずは、それぞれの項ごとの不用額を確認しましょう。不用額が発生していない項目は未執行予算がないので、確認しなくてもよいです。
項全体の金額に比べて、相対的に不用額が多い場合は、要注意です。あとは、細節番号が事業ごとに振られている場合は、細節番号を追っていくという方法もあります。手間はかかりますが、頑張って探してみてください。なぜ頑張るかといえば、予算の未執行というのは、執行部側にとっては議員が想像する以上に、重大な問題であると認識されているからです。できれば触れてほしくないのです。わざわざ予算化したにもかかわらず未執行ということは、予算化の前提や調査が甘かったということでもあり、また予定していた補助が付かなかった可能性もあります。
未執行予算を議論の俎上(そじょう)に載せて、未執行となった理由を問いただすことが、まずは決算審査のイロハのイといってよいでしょう。もし、その理由があまりにずさんなものであった場合、不認定理由とすることが可能です。
続いて、予算に比べて実際の執行額が低い事業についても確認する必要があります。年度後半になり、予想に反して予算執行率が低くなることが予想された場合、何とか予算を消化しようとする、補正予算で減額修正をする、あるいは別の予算項目に流用するなど、執行部は懸命に対応します。ですから、予算執行率が5割を切る事業というのは、なかなかお目にかかれないといってよいでしょう。かつて私も、景観条例に関わる事業の予算執行率が5割を切っていたことを見つけたことがあります。その理由について質問した結果、次年度からは予算額そのものが大幅減額となりました。ひとりPDCAサイクルを実現したともいえます。
決算審査を予算策定につなげる意味からいっても、未執行事業と予算消化率の低い事業は要チェックポイントであるということが理解していただけるかと思います。
以上の2点に関連して注目すべきなのが、予算の流用です。予算は、款・項・目・節と大項目から小項目に向かって分類されています。目・節間の流用は原則認められていますが、款・項間での流用は議会の承認事項となっています。流用は、必ず決算書に記載することになっており、流用元はマイナス表示、流用先はプラス表示で示されています。流用の項目を発見したら、流用元と流用先の使途と金額を必ず確認しましょう。流用があるということは、流用元の予算消化率が低いということでもあります。
特に、同じ目・節間で流用が認められているとはいえ、例えば人件費を消耗品費に振り替えるなど、全く違う性質の予算への流用は、なぜ流用せざるをえなくなったのかを確認しておくべきでしょう。