2023.09.25
第2回 離婚をしたら財産はいくらもらえるか
弁護士 尾畠弘典
離婚をしたら財産はいくらもらえるか。
離婚をすると財産を分与することになるが、その額は具体的な事例によって千差万別であり、一定額といった定めはない。
1 離婚の方法
離婚には、協議離婚、調停離婚、審判離婚及び裁判離婚がある。
(1)協議離婚
夫婦が話し合い、納得して離婚する場合、離婚届用紙に記名、押印して提出する。この場合、子どもはどちらが育て、養育費はどうするか、財産分与をどうするかについて、合意をしておくことが望ましい。
(2)調停離婚
家庭裁判所における調停手続の中で夫婦が話し合いにより離婚すること。離婚後の子どもの養育や離婚慰謝料、財産分与に関する合意も併せてなされる場合がある。
(3)審判離婚
家庭裁判所において、夫婦間の希望する離婚条件がほとんど一致しているにもかかわらず、わずかな食い違いがあって調停が成立しない場合等に、まれになされる。
(4)裁判離婚
離婚調停において調停が成立しない場合、夫婦の一方が離婚訴訟を提起することができる。この訴訟において離婚事由(民法770条。代表的な離婚事由として不貞行為やDV等が挙げられる)があると認められた場合、離婚をするという判決となる。当事者から附帯処分の申立てがなされた場合は、判決において子どもの養育、財産分与及び年金分割についても併せて決せられる。
2 民法の規定
協議上の離婚をした者の一方は、相手方に対して財産の分与を請求することができる(民法768条1項)。
財産分与について当事者間に協議が調わないとき、又は協議をすることができないときは、当事者は、家庭裁判所に対して協議に代わる処分を請求することができる。ただし、離婚の時から2年を経過したときは、この限りでない(同条2項)。
家庭裁判所は、当事者双方がその協力によって得た財産の額その他一切の事情を考慮して、分与をさせるべきかどうか並びに分与の額及び方法を定める(同条3項)。
裁判離婚においても協議離婚と同様である(同法771条)。
3 財産分与の構成
財産分与は、次の三つの要素から構成されるといわれている。
(1)清算的財産分与
婚姻中に夫婦が協力して築いた財産を寄与の程度に応じて配分することをいう。通常、単に「財産分与」という場合は、清算的財産分与を指す。
(2)扶養的財産分与
清算的財産分与や慰謝料の支払によっても、一方の離婚後の生活に経済的な不安が残る場合、当該一方の離婚後の生活維持のために財産の分与を行うことを指す。例えば専業主婦であった妻側について、離婚後にすぐには収入が得られないような場合に扶養的財産分与が認められることがある。
(3)慰謝料的財産分与
分与の相手方が離婚に当たって慰謝料を支払う義務がある場合、これを加味して財産分与の額を定められる場合がある。
4 離婚時の厚生年金の分割制度
平成19年4月1日以後に離婚をした場合、離婚した当事者間の合意や裁判手続により按分割合を定めたときに、当事者の一方からの請求によって、婚姻期間等に係る厚生年金について分割することができるようになった。法務省及び日本年金機構のホームページに詳しい制度の説明がなされている。
5 離婚慰謝料との関係
夫婦の一方が離婚に至る夫婦関係破綻の原因をつくった場合、もう一方はその相手方(有責配偶者)に対して離婚慰謝料を請求することができる。離婚慰謝料が認められる代表的な例として不貞行為やDVが挙げられるが、これに限られない。
なお、離婚慰謝料の請求に先立って、財産分与において慰謝料的財産分与をもなされていた場合は、離婚慰謝料の金額においては先行する慰謝料的財産分与の金額は考慮され得る。
6 有責配偶者も請求できる
財産分与は、有責配偶者であっても請求を妨げられない。しかし、慰謝料的財産分与として分与額が減額される場合もあるであろう。
7 財産分与等の実現方法
財産分与や離婚慰謝料の金額及び支払方法については、まずは夫婦間の協議により決する。協議ができないときや合意に至らないときは、調停や訴訟においてそれらの内容の確定を試みることとなる。