2023.09.25 コンプライアンス
第90回 案件が付託された委員会委員長の本会議での討論の是非/決算議案に対する質疑の是非
明治大学政治経済学部講師/株式会社廣瀬行政研究所代表取締役 廣瀬和彦
案件が付託された委員会委員長の本会議での討論の是非
A議会では9月定例会において、決算認定議案を決算特別委員会に付託して審査している。9月定例会の閉会日に、各常任・特別委員会に付託された議案等について一括議題とし、各委員長が本会議において委員長報告をしてから討論し、採決をする予定である。
決算特別委員長から、「一括議題とされる予定の決算特別委員会へ付託された決算認定議案について討論したいが、問題があるか?」との問合せがあった。
委員長の討論は、中立公平性の維持に疑義を生じかねないので、軽々しく行うべきではないとの考えもあると聞いているが、委員長が付託されて審査した議案に対して討論することに問題はあるか?
決算議案が決算特別委員会に付託された場合、当該委員会においては標準市議会委員会条例17条(標準都道府県議会委員会条例14条・標準町村議会委員会条例15条)により出席議員の過半数で決する議事運営となり、その際には委員長は原則、委員として議決に加わることができない。そのため委員長は、原則として決算議案に対して質疑や討論、表決を行うことはできない。
【市議会委員会条例17条(都道府県議会委員会条例14条・町村議会委員会条例15条)】
① 委員会の議事は、出席委員の過半数で決し、可否同数のときは、委員長の決するところによる。
② 前項の場合においては、委員長は、委員として議決に加わることができない。
なお、例外として標準市議会会議規則(以下「市会議規則」という)118条により、委員長が委員として発言しようとするときは、委員席に着き発言し、発言が終了した後に委員長席に戻り、議事運営を執り行うこととしている。
ここで、委員長が付託された案件に対して質疑や意見を述べた場合であれば、当該質疑等が終了した後、委員長席に戻り、委員長としての職務を行うこととなるが、討論を行った場合は、当該案件の表決が終わるまで委員長席に戻ることができない。
なぜなら、討論を除く発言であれば、当該発言が直ちに案件に対する表決態度を決定するものとはいえないため、委員長としての中立公平性が保たれ、発言が終了すれば委員長席に戻り委員長としての職務を行うことができるといえる。
しかし、賛否の意見の表明である討論を行った場合は、案件に対する一方の意見を支持する立場に属することとなり、中立公平を旨とする委員長の職務に反するため、次に続く表決が終了するまでは委員長としての職務を行うべきではないと考えられるからである。
委員長が討論を行うことは確かに市会議規則118条により認められているが、その後の議事運営に影響が残ることもありうるので、やむを得ない案件に限定することが必要である。