2023.08.25 仕事術
第6回 どうする街路樹
許可なく市道沿いの街路樹が強剪定された
私もかつて、市の許可なく強剪定(樹木の剪定に当たって、太い枝を短くする、多くの枝や芽を切り落とすなどの剪定方法。剪定の方法が下手だと枯れる可能性も大きい)された街路樹の問題を議会で大々的に取り上げたことがあります。このときは最終的に、強剪定を関係業者に促した建設会社から、90万円を市に寄附してもらうところまでこぎ着けました。このケースでは、マンションの新築工事に当たり、クレーン車が作業する場所が十分に確保できなかったために、市道にクレーン車を停車させて作業していました。その作業の邪魔になるということで、13メートルあった街路樹が剪定されて7メートルになってしまいました。
マンションの建設に当たり、クレーン車を利用して市道から作業するために、作業の邪魔になった街路樹が切られた様子(2006年6月頃、筆者撮影)。
街路樹の違法な強剪定に怒った近隣住民のAさんからの苦情で、私も早速現場を見に行きました。なるほど街路樹は、写真のように見事に剪定されていました。Aさんは、子どもの頃から見慣れた街路樹が、3本だけ強剪定されたことで、高さのそろった街路樹の景観が失われたことに怒っていました。
街路樹を伐採した業者の顧問弁護士は、「木は強剪定という形であって、木がなくなっているわけではない、消失したわけではないと。そういたしますと、いわゆる損害というような算定が、木がなくなったという、いわゆる損害という見方よりは、木が今まで街路樹として、機能といいますか美観といいますか、その機能損失の一つの考え方だろうということ。それと、あと併せまして、その機能は十分、いわゆる強剪定ですから、再生可能であると。はっきり言えば、街路樹として再生可能である」といっていると、担当部長が公式に議会で回答しています(所沢市2007年2月23日開催3月定例会(第1回)会議録)。
このケースの場合は、建設工事に伴う伐採であったことが、冒頭の中古車販売会社のケースとは少し条件が違います。
先ほどの神戸市のサイトにも「Q 街路樹を撤去してください。」という質問に対して、「乗り入れの設置や、建物の工事等で支障となる場合には、工事をされる方の負担で移植・撤去することができます」とあるように、建物の工事の支障となる場合には街路樹の移植・撤去が可能とされています。市としては、新しいマンションが完成することによって、税収増が見込めます。それに今回のケースは、「撤去ではなく伐採なので、何が問題なのか」という対応でした。
私は、「ケヤキ並木の不法伐採への対応について」という一般質問をすると通告しました。
一般質問や請願を通じて問題を顕在化させることで世論を喚起
強剪定の問題を争点化、つまり住民や議会、執行部、そして業者にも、「街路樹の違法な強剪定は問題だ」と思ってもらうためには、やはり世論を喚起することが重要であると考えました。
マンション業者は、販売開始に当たって近所の評判を気にします。世論を通じて悪評が立てば、それだけ完売までの日数が長くなり、結果的に販売コストが増えてしまいます。ですから、世論が喚起されれば、こちらからの交渉に乗ってくることが、これまでのマンションに関わる事例で分かっていました。世論を喚起するにはまず、多くの住民に関心を持ってもらう必要があります。
そこで、少し視点を変えた「市道を利用した工事の許認可について」の質問も同時にすることにしました。今回のマンション工事に伴う市道の利用について、市が詳細を承知していたかどうかを確かめる質問です。承知していて、それを許していれば、それはそれで問題です。一方で、承知していないとすれば、市の不作為であり、制度的に何らかの問題があると追及できます。
また、正直にいえば、街路樹を強剪定していたことに対する住民の反発はそれほどでもなく、むしろ93日間にもわたって、工事のために道路を占有していたことに対する住民の苦情の方が大きかったのも事実でした。
業者に対しても、街路樹の不法な強剪定だけでなく、工事そのものによる道路の渋滞についても住民の不満が相当高まっているという事実を、議会の一般質問を通じて伝えることにしました。
以下、私と執行部とのやりとりです。
木田「クレーン車を使った工事のため4月から6月まで、長期間にわたって市道の片側通行規制がなされて、周辺道路の大渋滞を引き起こし、大変迷惑している。昨日も現場に出向いたところ、片側通行規制で、クレーン車を利用した工事が進められていた。現場に掲示されている道路使用許可証を見たところ、6月12日9時~18日までの使用許可証が掲示されていた。いくら工事のためとはいえ、これほどまで市道を長期間使用して行われた工事というのは、私の知っている範囲ではない。市は、今回のこの工事について、着手からこれまでに、実際に何日間、道路使用許可申請されたかを把握しているのか? また、これまで、市道に面したマンション建設で、このように長期間片側通行を行い、住民から苦情が出た例があったのか、把握していれば示していただきたい。」
道路公園部長「道路使用許可について道路交通法77条により、当該行為に係る場所を所轄する警察署長に伺ったところ、更新を重ねながら合計93日間の道路使用の許可手続が行われている。苦情の有無については、警察署に確認したところ、過去にも同様な道路使用で苦情が寄せられたこともあるとのこと。」
木田「今回のようなクレーン車を利用し、片側通行規制をして工事を行う場合、本来は、道路占用許可を出させるべきと考える。だが、現在市では、こうしたクレーン車を利用した工事については、道路法32条に該当しないということで、道路交通法77条に基づく道路使用許可を警察に申請するのみで済ましている。
こうなると、市としては市の所有する営造物である市道を片側通行規制され、さらに市民が大きな迷惑を被っているにもかかわらず、許可プロセスに何ら介入できないということになっている。実際に調べてみると、クレーン車で工事を行い、片側通行規制をする場合でも、市に届けさせていない市もあることを発見した。一方で道路法46条を盾に、市道を利用して片側通行規制を行う場合は、市長に届出をさせている市が数多くある。これまでは、そうした問題がなかったこともあり、制度の整備が遅れていたと思うが、我が市もこうした一企業の私益のために公共の福祉が犠牲になることを防ぐため、市道の片側通行規制には申請をさせるという運用を警察と協議の上、検討する、若しくは道路法46条に基づき、まずは市に申請を出させて、その後、市から警察に届けるというように改めるべきではないか?」
道路公園部長「道路法32条、及び同法施行令7条1項4号には該当しないものと考える。また、道路法46条は、道路の破損、欠壊、工事などにより道路管理者が通行の禁止や制限をするもの。よって、クレーン車による工事については、他の交通の安全と円滑を図るため、道路法77条1項1号による所轄警察署長の許可が必要。しかしながら、市道においての工事であり、近隣住民の生活や他の交通の円滑、緊急車両等の活動から関連部署、所轄警察署等と協議をし、工事による道路使用状況の把握ができるよう検討したい。」
本題であった「ケヤキ並木の不法伐採への対応について」という一般質問は取りやめることにしました。質問をする前に、街路樹の違法剪定に対して業者側から金銭的な補償が行われることが、一般質問のヒアリングの際に執行部から伝えられたからです。