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2023.08.10 仕事術

第5回 どうする議会事務局①

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議会事務局への異動は悪いことばかりでもない?

 では、議会事務局への異動を希望する職員はいないかといえば、そうでもありません。
 ある職員は、希望して議会事務局に異動してきました。その動機は定かではありませんが、怖いもの見たさだったのか、あるいは、たまたま当時いた職場からどうしても異動したくて、希望すれば異動しやすい議会事務局を希望したのか。
 しかし、その職員は本当に優秀で、公聴広報活動を中心に、新機軸の企画をいくつも打ち出してくれました。
 議会事務局での仕事も楽しそうにこなしていました。その職員は、議会で執行部にとっては不利になるような企画を実施したにもかかわらず、別の部署に異動後も、順調に出世コースを歩んでいます。
 議会事務局への異動は、デメリットばかりではなく、メリットもあります。
 まず、執行部の予算から決算までの全プロセスが俯瞰(ふかん)できるということが挙げられます。課長以上の幹部クラスにならないと、議員や議会活動に接する機会はなかなかありませんが、議会事務局の場合は、主査クラスの職員であっても、議員や議会活動に接する機会があります。普段は偉そうにしている課長や部長などの管理職が、議員の前では答弁に詰まる、どぎまぎするなどの部下には見られたくない姿も見ることができます。逆に、議会の答弁の善しあしで、管理職の力量も推し量ることもできます。
 また、議員と顔見知りになることで、議会事務局から異動後も、議会事務局を経験しない職員に比べて、議会対応では有利になります。例えば、予算審査や委員会質疑などでも、議員からのツッコミが多少なりとも和らぐ可能性があります。実際、私も予算審査などで、議会事務局職員経験者が説明者にいる場合、どうしても追及の語調が甘くなりました。やはり大変お世話になったという事実と、視察などでじっくり語り合ったことで、ある意味、気心が知れているからです。
 議会事務局での活躍ぶりにより、出世コースに乗る職員もいます。ある職員は、議会事務局に来るまでは、執行部の評価は高くなかったようですが、議会事務局での議員のあしらいが上手だったこと、議員のあしらいを通じて得た交渉力で、異動後の部署で住民対応に尽力したことが評価されてか、後に部長にまで出世しました。
 また、様々な事情があって、個人的に首長とソリが合わない職員もいます。そういう場合は、首長が困る案件について積極的に協力してくれました。
 一方で、別の職員は、議会事務局というより、議員という存在が苦手だったようで、そのほかにも事情があったとは思いますが、職員を辞めてしまいました。
 本当に申し訳ないことです。議員の中には、議会事務局職員を自分たちの部下とみなす者もいます。いつぞやは、視察先での夜の反省会(宴会)において、今はなくなった党所属の議員と随行した議会事務局職員が口論になり、その議員が、当該職員に向かって「おまえ、(別の部署に)飛ばしてやる」と酔った勢いで口走り、別の議員がその議員の発言に激怒して、大げんかになったことがあります。その職員は、政務活動費の精算を担当しており、議員にも手心を加えない対応ぶりへの不満が爆発したのではないかともいわれています。
 その職員にしてみれば、「議会事務局から異動できるならありがたい」と思ったかもしれません。我が市議会でも、最近では、視察先での夜の宴会については、原則、議会事務局職員に手配や同席はお願いしないことになったようです。これはこれで、議会事務局職員とじっくり本音で語り合う機会がなくなり、少し寂しい気もします。

首長が変われば議会事務局への執行部の対応も変わる

 では、執行部の権力中枢や職員人事を取り仕切る側は、議会事務局人事をどう差配しているのでしょうか。私はそちらの立場になったことはないので、ここ20年の人事配置の動きから分析してみます。分析に入る前に、我が市議会事務局の構成を確認します。
 まず、主に、議事を差配する議事グループ、政策調査や広報を担当する調査・広報グループ、そして、特に議員の報酬や政務活動費、その他叙勲の調査などを担当する総務・庶務グループに分かれます。一方、グループの所属に関係なく、四つの常任委員会に、担当職員が2人ずつ配置されます。議会運営委員会については、専ら議事グループが担当します。
 また、私の任期途中から、全員参加型ではない予算委員会が創設されたので、この予算委員会の担当も必要になります。
 厄介なのが特別委員会で、できてしまうと人繰りが苦しくなります。そのため議会事務局的には、なるべく特別委員会はつくらないように誘導する気配を感じました。
 直接的には、2009年の議会基本条例の制定を起点にして様々な改革が進み、明らかに議会事務局の業務負担が増えていきました。その一方で、人員補充は不十分です。
 私が議員になりたての2004年前後の議会事務局は、実に平和でした。議会の定例会のある月の前後、特に議事録の作成が完了するまでは残業続きのようでしたが、それが一段落すると、次の議会までは、比較的穏やかな時間が流れていました。
 議会事務局長は、当時の首長の側近グループの職員でした。首長から見れば議会のお目付け役であり、議会が変な動きをしないようにコントロールすることが役目の一つだったようです。前回紹介した議長選をめぐる抗争で、ある職員は、当時の議会事務局長にいわれて、議員のよからぬ動きを封じるために立ち回ったという裏話をこっそり教えてくれました。
 その後は、今はなくなった党出身者が首長になりました。その首長が執行部を完全に掌握できておらず、職員の首長に対する忠誠心もそれほど高くなかったせいか、執行部側の権力中枢の議会に対するグリップ力は弱まりました。というより、議会においても、首長のいわゆる与党系議員が少数になったために、むしろ議会には大いに暴れてもらって、首長をけん制してもらいたいという雰囲気すら執行部の一部、特に前首長に忠誠を誓う職員には漂っていました。
 こうした変化が根底にあったこともあり、我が市議会では2008年に「議会基本条例の制定に関する特別委員会」を設置し、議会基本条例の制定にこぎ着けることができました。

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